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by はんきち

『流星ひとつ』・・・深夜特急との交錯

僕はどうしてか対談・インタビュー集を読むのが苦手だ。それはおそらく、登場している二人の対話や会話の時間やテンポに、自分のそれを合わせられないからかもしれない。あるいは、人の話を聞くということ自体が苦手であるからかもしれない。どちらが語っているのかが示されていることも、なんだか嘘くさく芝居がかったものとして感じてしまう。

それでも沢木耕太郎の『流星ひとつ』(新潮文庫)は気になっていて買い求めていた。読み進めることができるかな、ということが頭を過りながら文字を追っていったが、やがてそれは余計な不安だと分かった。一気に読み終え、そして深く溜息をついた。インタビュー本として、これほど臨場感の高いものに触れたことがなかった。1979年秋に、藤圭子が引退を表明した直後のインタビュー記録だった。

沢木さんは、ルポライターとしてデビューしたのちに、アジアからヨーロッパを放浪する。そのことはのちに紀行小説『深夜特急』に書かれているが、この『流星ひとつ』はそういう本を出す前の時期のものである。

彼は藤圭子に対して、1974年の冬に遇ったことがある、と伝える。件の紀行を終えてアエロフロート便で日本に帰るその日に、パリのオルリー空港のチェックインカウンターで彼女らに遇ったというのだ。そこですこし手助けしたことにも触れる。彼女も微かにだがそのことを思い出す。

沢木さんがどんな作家なのかも知らなかったのだろうけれども、そういう私的時間の交錯のような事柄もトリガーになって、インタビューとも雑談ともつかぬ対話が重ねられていく。そして彼女は少しづつ胸の内を開き、心の琴線をつまびいていく。

僕は対談、インタビューというものを甘く見ていた。

珠玉の状態というものに触れて初めてそれが分かった。

■『圭子の夢は夜ひらく』→https://youtu.be/b71URzzkSok

■類似が指摘されることもあるナンシー・シナトラとリー・ヘイズルウッドによる「サマー・ワイン」Nancy Sinatra & Lee Hazlewood - Summer Wine →https://youtu.be/YiISrw2GTXE

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by k_hankichi | 2016-09-04 09:20 | | Trackback | Comments(3)
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Commented by maru33340 at 2016-09-04 11:21
これは気になっていた本。
読んでみよかな。
Commented by Oyo- at 2016-09-04 11:52 x
いま私も対談を読んでいるところです^^ 須賀敦子と池澤夏樹の(かなり違うようですが・・)彼女の全集の別巻なのですが発見があります。
それにいたしましてもこちらの2曲、確かに似ていますね。どちらが先なのかしら? 
Commented by k_hankichi at 2016-09-04 19:08
maruさん、良いですよ。インタビューというものは、こういうところ(レベル)までできるのだ、と思いました。

おようさん、「サマー・ワイン」のほうが早いそうです。これに影響を大きく受けたものだと思いますが、演歌になるとは米国の人たちも予想もしなかったでしょう。