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by はんきち

老年の『ジニのパズル』

民族と言語のはざまで、少女がはるか米国まで渡って自分の居場所を探し求めるものが『ジニのパズル』(崔実、講談社)だとすれば、『寂寥郊野』(吉目木晴彦、講談社)は、その若くして米国に渡った女性が老年に自分の居場所を失っていくものだった。

舞台はルイジアナのバトンルージュ。戦争花嫁として渡った幸恵・グリフィスは、夫のリチャードとともに老後の日々を送っている。そのようななか、彼女が少しづつ鬱になり記憶を失いはじめ、周囲との摩擦を起こし始める。始めはそれを周囲の勘違いだとしていた幸恵も、ようやく自分が発症したのだということに気付く。

遠く米国に渡った幸恵は、自分の居場所がどこなのか分からなくなっていき、その寂寥郊野(ソリテュード・ポイント)のなかを流離うかごとくになっていく。読んでいる自分も、その哀しみに胸の奥が痛む。

1993年の上半期(第109回)の芥川賞受賞作だった。

寂寥郊野

吉目木 晴彦 / 講談社

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by k_hankichi | 2016-08-26 07:13 | | Trackback | Comments(2)
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Commented by Oyo- at 2016-08-26 12:42 x
自国にいても錯覚を起こす夢をみます(^_^;)
読んでいないみたい・・読んでみます。
Commented by k_hankichi at 2016-08-26 21:57
おようさん、知られざる芥川賞作家らしいです。受賞のあとは学究、教鞭に戻って専念されているような様相。詳しいことはわかりませんが、それもまた小説のような仕立てに思えてなりません。