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by はんきち

『ジニのパズル』の若い息吹

新聞の全面広告に掲載されていて、これは読まねばという声が聞こえた。さっそく取り寄せて読了。『ジニのパズル』(崔実、講談社)。第59回群像新人文学賞を受賞した作品だそうだ。

物語は、オレゴンのハイスクールに通うジニという少女の手記だ。読み進めていくうちに、彼女が普通の米国人ではないことに気付き始める。ハワイから転校してきたこともわかる。しかしどうしてハワイから?

彼女は、ステファニーという女性童話作家の家にホームステイをしている。マウント・フッドという山が見えるような場所だ。次第次第にジニは心を開いていく。コロンビアリバー上って滝を見たり、カントリーハウスを訪れたりする。

僕もかつて仕事で訪れたことがある場所。雄大な自然、晴れ渡った青空と山々の陰影の交錯。いつかまたあそこを訪れてみたい。

彼女が在日韓国人であったということも次第に明らかになっていく。思春期の手記なのだ。日本の小学校を卒業して朝鮮学校に入学することになり、初めて朝鮮語に触れる。そしてかの国の主席の写真が掲げられた教室に入る。クラスメートからは不思議な目で見られ始め、違和感に苛まれる毎日が始まる。

そして起こるいくつかの事件と屈辱。

はるばるオレゴンまで辿りつかざるを得なかったジニ。アメリカに渡った詳細やハワイからオレゴンに来た詳細は明らかにされないのだけれど、書かれていないからこそ、その間に起きただろう様々な哀しみと落胆、そして微かな希望のことが想像できる。

青春文学の息吹に、自分自身も心が洗われた気がした。

ジニのパズル

崔 実 / 講談社

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by k_hankichi | 2016-08-20 09:37 | | Trackback | Comments(0)
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