『菜食主義者』・・・北欧人のような鋭敏さとアジアの温かさの融合

韓国の小説を初めて読んだ。『菜食主義者』(ハン・ガン、クオン社刊)。自分は植物になりたい、という願望に憑りつかれた大人の女の物語だ。

翻訳者の、きむふなという方が、あとがきで次のように書いている。

“人間の強くて熱い欲望は、そこに潜む暴力性によって私たちを一匹の獣へと化す。この獣の条件と戦う個人の内面的な経験が、ハン・ガンの作品の重要なテーマとなっている。私たちが夢見るのは花や木の植物の世界だが、私たちが立っているのは獣の世界だ。作家は獣の運命と植物への夢を一身に背負う悲しい宿命を見据えて、失った楽園への帰郷を夢見る。・・・(中略)それでも、欲望や怒り、憎しみなどに振り回され葛藤する獣の世界とその欲望から抜け出した植物の世界のぶつかり合いは、その対立的な意味にもかかわらず、生命のエネルギーを発する。そして、その慰安の言葉によって、孤独と傷だらけの登場人物と、読者である私たちの体はいきいきとした植物となる。”

なるほどと思った。この小説家は北欧人のような鋭敏さとアジアの血の温かさを兼ね備えている。そしてその地は、獣の血ではなくて、植物の幹や葉脈のなかに流れている、水性の電解質なのだと思った。

世の中に、どくどくとした欲望にまみれた人たちが跋扈するこの現生。植物化していくほうが、もっともっと安らかなのかもしれない。

作者は2005年に、この作品で韓国で最も権威ある李箱(イサン)文学賞を受賞した。

菜食主義者 (新しい韓国の文学 1)

ハン・ガン / cuon

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by k_hankichi | 2016-06-16 18:44 | | Trackback | Comments(3)
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Commented by Oyo- at 2016-06-16 20:43 x
韓国という国のイメージが沸々と湧いてきました(^o^)
Commented by maru33340 at 2016-06-16 22:37
なかなか凄そうな小説やなあ。
Commented by k_hankichi at 2016-06-17 07:23
おようさん、maruさん、想像以上に登場人物たちの気持ちが分かりました。やはり極東人の繋がりたがらでしょうか。


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