僕の忘れ物はどうやら電車に乗って遥か彼方に行ってしまった。今ごろは温泉街にまで足を伸ばしているかもしれないし、いやいや菖蒲の里近くを疾走しているかもしれない。
それにしても失ったものであろうとも、その居場所を調べてくれる日本の捜索システムというものは凄い。というか恐れ入る。
自分が大切にしているものであれば肌身離さずにしていなくちゃ、という声が聞こえるが、そうしていてもいつの間にかするりと自分の許から離れていってしまうものなのだと改めて思い知る。もしかすると人間もそうかもしれない。
いつか離れていってしまうものだと互いに悟りながら、小さく震えるように暖かな心を通わせていく。
生きとしいけるものたちの宿命に気付く。