『須賀敦子を読む』を読む

湯川豊による『須賀敦子を読む』(集英社文庫)を読んだ。その頁を繰るたびに、こころにずきんと来る。そして譬えようもなく大切なものを思い出した気持ちになる。
“「あとがきにかえて」の次のような文章は、そういう私の印象をさらに裏付けている。
<<それぞれの心のなかにある書店が微妙に違っているのを、若い私たちは無視して、いちずに前進しようとした。その相違が、人間のだれもが、究極においては生きなければならない孤独と隣あわせで、人それぞれ自分自身の孤独を確立しないかぎり、人生は始まらないということを、すくなくとも私は、ながいこと理解できないでいた。>>
須賀敦子は『コルシア書店の仲間たち』で、「孤独を確立しないかぎり、人生は始まらないこということ」を、仲間のひとりひとりを呼び出し、再現し、検証しようとした。”(「第一章 もう一度、コルシア書店を生きる」より)

僕らの学生時代も同じだった。そういう記憶が、すこしづつ蘇ってくる。

“内に「小説」を孕んでいるような構造と、それを支えている論理的な文体。しかしそのうえで回想的エッセイという枠組みを取り払うことは最後までなかったから、その文章は小説とよばれることをどこかで、強く拒否している。同時に、これまで見てきたように、普通の意味での回想的エッセイに終ってはいない。過去を物語風に再現したエッセイは、濃密な「現在」をもって一個の作品になっている。私たちはそこで、二十年前三十年前の「現在」を生きる人びとに出会う。そして須賀敦子がその人びとと共に生きなおしている姿を読みとるのである。”(「第五章 家族の肖像」より)

たしかにそうだと思った。その人びとと共に生き直している、それを噛みしめている喜び。単なる懐かしさや、古き良き日を辿って自己肯定しているのでもなく、「確かな生とそのときの時間の流れ」を味わっているのだと思った。

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須賀敦子を読む (集英社文庫)

湯川 豊 / 集英社

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by k_hankichi | 2016-04-13 06:31 | | Trackback | Comments(2)
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Commented by Oyo- at 2016-04-13 07:28 x
山間の家に何冊か須賀敦子の本がありました。読んできます。
Commented by maru33340 at 2016-04-13 08:58
学生時代に「読むことは生きること」と思いながら過ごした日々を思い出すなあ。


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