『ユダヤ人と近代美術』(圀府寺司、光文社新書)は、とても面白い評論だった。あまり期待もせずに読み始めたことが恥ずかしくなるくらい、ぐいぐいと惹きこまれた。
ユダヤ人が自らの宗教に忠実であろうとすればするほど、絵画、彫刻というものを拒絶しなければならなかったという。モーゼの十戒ののなかの第二戒に書かれている偶像崇拝の禁止だ。
“「あなたはいかなる像も造ってはならない。上は天にあり、下は地にあり、また地の下の水のなかにある、いかなるものの形も作ってはならない。あなたはそれらに向かってひれ伏したり、それらに仕えたりしてはならない」(「出エジプト記」20:4-5から)”
"堕落して、自分のためにいかなる形の像も造ってはならない。男や女の形も、地上のいかなる獣の形も、空を飛ぶ翼のあるいかなる鳥の形も、地上を這ういかなる動物の形も、地価の海に住むいかなる魚の形も」(「申命記」4:6-18から)"
こういう状況から脱することに至ったのは、フランス革命によるという。啓蒙主義、平等主義、民族解放と発展し、ユダヤ人がその宗教の戒律から解放されて、埋もれていた才能、隠されていた才能を発芽させていった。(※一方、音楽についてはこういった戒律と関係しないと見做され、これに先立つこと半世紀前にメンデルスゾーンらが進出していた。)