『偽詩人の世にも奇妙な栄光』の独白

独白小説と云えば、太宰治だと思っていたのだけれど、それが現代にもあるのだと思った。『偽詩人の世にも奇妙な栄光』(四元康祐、講談社)。
“一方では詩が書けぬことに苦しみ、苦い挫折を味わいながら、もう一方ではまさに詩が書けないというそのことによって、自らが真の詩人であることを知る。言葉を持たぬがゆえにこその詩人。そこに韜晦や欺瞞や自己憐憫はなかった。ただ純粋な詩への愛と、それゆえの痛みだけが溢れていた。そうして、誰がそれを否定できただろう。十七歳の少年の額には、たしかに刻印が打たれていたのだ。トニオ・クレーゲルが美しく快活な友人たちから自分を隔てる呪いとして自らに見出し、デミアンが罪人カインに喩えてジンクレール少年に語ったところのあの見紛うなき「額のしるし」が。後に彼の書く詩がすべて偽物であったとしても、このとき昭洋が詩人であったということだけは、紛れもない真実だった。”
こんなに主人公が語り続け、道化師のごとく蔑みながら、自己愛に満ちる小説は久しぶりで、しかしその世の中を透徹に見据える純粋さには、目が覚める思いがした。

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偽詩人の世にも奇妙な栄光

四元 康祐 / 講談社

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Commented by Oyo- at 2016-02-25 11:28 x
奇妙な本があるのですね・・・^^
Commented by k_hankichi at 2016-02-25 18:57
おようさん、はい。極めて奇妙でした。
Commented by maru33340 at 2016-02-26 06:43
奇妙だけどなかなか面白い小説でした。僕は好きなタイプの物語なり。
Commented by k_hankichi at 2016-02-26 07:26
maruさん、味がありますよね。
by k_hankichi | 2016-02-25 00:51 | | Trackback | Comments(4)

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