バッハのカンタータBWV106のソナティーナの静けさ
件の『革命前夜』のなかで、二度出てくる音楽が、バッハのカンタータ「神の時こそ、いと良き時」BWV106のなかの ソナティーナだ。この曲のことは全く知らなかったのだけれど、聴いているうちに、どうしてこれを登場させたのかということが少しづつ分かってきた。
小説の中では、次のように書かれている。
“葬送用に作曲されたカンタータである。ソナティーナは、合唱の前に置かれる器楽のみのシンフォニアで、三分にも満たない素朴な曲だ。バッハが二十二歳の時に生み出したこの曲には、死の悲しみの彼方を見つめているような、不思議に明るい響きがある。ああ、バッハだ。音を吸い込むように、僕は目を閉じ、深く呼吸をした。どんな時も寄り添い、応えてくれる音。命そのもの。二十二歳といえば、僕のひとつ下。この歳にして、どうしてこれほどの透徹した死生観をもっていたのか。素朴で、心を打つ響きは、今なお多くの者を魅了する。”(「第1章 銀の音」から)
東と西に分かれて仲たがいをしなければならなかったドイツの悲劇。バッハの時代から、神の啓示を伝えるべく宗教の伝道に真摯に取り組んできた彼の地が、猜疑心と裏切りを繰り返す場所に変わってしまった。ここにも二度と繰り返してはならないことがある。
■J.S.Bach/G.Kurtág - Gottes Zeit ist die allerbeste Zeit performed by DUO Stephanie and Saar →
https://youtu.be/0wOlGJFkqic■Johann Sebastian Bach - Cantata BWV 106 - Actus Tragicus - Sonatina →
https://youtu.be/Zz8OrAdNTfY