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by はんきち

東ドイツの栄光と陰影の狭間の音楽と恋

これまた凄く濃厚な小説を読了。『革命前夜』(須賀しのぶ、文藝春秋)。第18回大藪春彦賞を受賞した作品。

時代は1989年。東ドイツのドレスデンの音楽学校でピアノを学ぶ日本人留学生の眞山柊史(マヤマ・シュウジ)。彼の前に、ハンガリーから来ている天才ヴァイオリニストのラカトシュ・ヴェンツェルが立ちすくむ。彼らはひょんなことからデュオを組むが、天性の音楽観でもって変幻自在に演奏するラカトシュと組むことでシュウジのピアノは思いもかけない輝きを増すことに、彼は我ながら驚きを隠せない。

しかしソロ演奏となると別だ。北朝鮮からのリ・ヨンチョル、ベトナムからのスレイニェットたちのピアノは、それぞれの生い立ちを背負った個性に輝く。シュウジは自分のピアノがいかに精密機械のようなものだったのかを知る。

そんな彼の前に天から舞い降りたかのように現れたのは、美貌のオルガニスト、クリスタ・テートゲス。バッハやラインベルガーのオルガン曲を奏でる。シュウジは彼女を追い求めて街をさ迷い歩き始める。

舞台は、ドレスデンからライプツィヒへ、そして西の世界のミュンヘンやベルリンに移り変わり、東と西の世界が対比される。

東ドイツの栄光が、自由への勢力のもとに崩れ去ろうとしている革命前夜の、若き男女たちの篤き血潮に溢れた音楽と恋が、繰り広げられていく。

須賀しのぶという人の作品を初めて読んだのだけれど、彼女のクラシック音楽への造詣の深さに深く頭を垂れたとともに、そこに出てくる音楽の数々を、深く静かに聴き入りたいと思った。

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革命前夜

須賀 しのぶ / 文藝春秋

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by k_hankichi | 2016-02-20 20:51 | | Trackback | Comments(3)
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Commented by maru33340 at 2016-02-21 06:57
僕もこの小説読んだけど、はんきちくんのお薦めで読んだとずっと思ってたよ。
凄い書き手やね。
Commented by Oyo- at 2016-02-21 07:13 x
ドイツのクラシック音楽界が何かリアルに思い出されます。(最近、沈むおようより)
Commented by k_hankichi at 2016-02-21 08:04
maruさん、このストーリー性といい、クラシックマニア度といい、われわれ好みです。
おようさん、元気戻してください。この本で、もしかすると貴重な時の軌跡がよみがえるかもしれません。お薦めします。