『題名のない音楽会』は昔から苦手な番組だった。Gメン75の俳優と信じて疑わなかった先々代司会者や、正義に満ち溢れるエネルギーに圧倒された先代司会者が、僕をそうさせたのかもしれない。
ところがどうだ。
新しくなった司会者は、そんな気配は微塵もない。余計な企みや、感動の押し付けや、ひとを喰った物言いなどが皆無である。
彼の周囲にはエレガンスが満ちていて、溌剌ななかにも男気がある。
毎週の日曜日の午前を、退屈から至福に変えてくれ、前後にあるバラエティー番組のことを記憶から雲散霧消させてくれた。
それをもたらした男。彼の名前を、五嶋龍という。
■その持ち味の図。カニグラタンにスティックサラダ、それもセロリを浸けて食べる感じ。知性と豊潤と斬新快活の良きバランス。