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by はんきち

『雨の裾』(古井由吉)の静かさ

学生時代にはたくさん読んだ古井由吉の小説を久しぶりに手に取った。『雨の裾』(講談社)。なんともいえぬ、老いた男の諦念に満ちた作品だった。

歳をとることによる、身体と心の不調和について、次のように書いている。

“ある境を越すとしばらくは自分から、空足でも踏んだように前のめりに、上機嫌に年を取っていく。そのあぶばっかしい様子は若い眼にはあらわに、肉親ならよけいに子供っぽく映るだろう。しかしそれは初老期か、せいぜい還暦過ぎまでの、壮健さの打製だか慣性だかがまだ尽きていない頃のころだ。年寄りこそ時にはしゃいで、取りとめもなくなるが、そのはしゃぎ自体が皺ばんでいる。並んで坂をのぼっているこの本物の年寄りを青年はどうみているのか、そこをすこし確かめたくなり、またたずねた。”(「躁がしい徒然」より)

なんとまあ、悟りきった人であることか。その還暦がだんだんと近づいている自分ながらに、いろいろと心が足るところがあり、なんとも心が静かになった。

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雨の裾

古井 由吉 / 講談社

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by k_hankichi | 2016-02-12 06:59 | | Trackback | Comments(3)
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Commented by maru33340 at 2016-02-12 08:36
懐かしい。最近読んでないなあ…
Commented by Oyo- at 2016-02-12 18:22 x
何とも題名が面白い・・・。最近の街々はその姿をさらけ出して年寄りたちは自分と比較しながらゆっくり階段を降りています^^ 還暦過ぎまではまだまだ大丈夫です(^・^)
Commented by k_hankichi at 2016-02-12 20:18
maruさん、馬事公苑あたりの話を聞きましたよね。
おようさん、いえ、年齢ということは余り意識しておりません。同じ仲間として認識しております。