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by はんきち

『ロゴスの市』(乙川優三郎)に思わず気持ち昂る

友人から『ロゴスの市』(乙川優三郎、徳間書店)がまさに我々の世界のようだと教えられて、すかさず読んだ。胸の奥をギュッと鷲掴みにされるような、そして気持ちが思わず昂る小説だった。

昭和55年、20歳の学生たちは、三鷹にある大学で人文科学(語学科)の研鑽に励んでいる。ペンクラブに入っている成川弘之は、翻訳家を目指している。戒能悠子は、通訳者(それも同時通訳)を目指している。彼は彼女に一目惚れし、語学表現、語学能力を互いに刺激しあう関係になる。

夏合宿、あまたある作家たちからの刺激、どぎまぎしながらのレストランでの食事。触れたいけれども触れられない。そのもどかしさが、僕自身にもわかる。

彼らの関係も一つ進む。ときおり邂逅し、静かな、そして深く篤い関係を持つ。しかしそこから更に進むことはない。それでよいのだ、という静かな諦観。

彼らの関係の始まりと終わりには、飛行機事故がある。文学の世界とはまるで違う、何とも現代的な契機だ。しかしこれは逆説的に言うとすれば、人と人の関係というものは、そういうものでも無い限り何年も何十年も変わることはないのだ、ということなのかもしれない。
 
静かさの中にある情熱に包まれた作品だった。

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ロゴスの市 (文芸書)

乙川 優三郎 / 徳間書店

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by k_hankichi | 2015-12-30 14:06 | | Trackback | Comments(4)
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Commented by およう at 2015-12-30 16:23 x
何か面白そうですね^^
Commented by k_hankichi at 2015-12-30 17:32
おようさん、これはとっても良い小説ですよ。
Commented by maru33340 at 2015-12-30 20:59
一気に読めてしまう小説やったなあ。
Commented by k_hankichi at 2015-12-30 22:13
maruさん、こりゃ、我々の仲間の世界に通じるよね。