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by はんきち

『小説 西脇順三郎訪問記』の孤愁

友人から薦められて読んで感銘した。『吉岡実と森茉莉と 秋元幸人随筆集』(思潮社)。とくにこの中に収められている『小説 西脇順三郎訪問記』。次のような感じだった。そこに臨席しているような気がした。

夏の河原を行く奴は誰だ
こはく色の水がてかてかに光り
女神の速度で流れている
ボタンヅルのからむ藪の道を
静かにゴム靴をはいて歩くのだ
路よ静かに流れよ記憶の終るまで

一九八〇年という奇妙に気温の低かったこの年には、しかし西脇順三郎の夏の道はすでに終わっていた。あの暗い岩と黒苺の間をただひとり歩くことも終わりを遂げていた様子だった。
「もう一定の距離以上歩けない・・・・・。」
今や西脇順三郎は詩集『人類』(一九七九年)をも書き終えてしまった詩人として、全人類の、全生物のことごとくの神秘を司る高みに漂うべく、歩くなどというまどろっこしい手段の代わりに羽化登仙する瞬間を待っている感じだった。
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吉岡実と森茉莉と

秋元 幸人 / 思潮社

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by k_hankichi | 2015-11-17 06:19 | | Trackback | Comments(4)
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Commented by maru33340 at 2015-11-17 18:16
この人のことは知らなかったなあ。
Commented by k_hankichi at 2015-11-17 18:55
良いですよ!
Commented by およう at 2015-11-18 05:57 x
このような本があるのですね。‘女神の速度で流れている’彼らしい^^
Commented by k_hankichi at 2015-11-18 08:56
おようさん、こころが落ち着きますよ。