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by はんきち

『あの日、マーラーが』(藤谷治)の人々のなかに響く音楽

ブログ知人が読んでいることを知って、読み進め、感銘した。『あの日、マーラーが』(藤谷治、朝日新聞出版)。

2011年3月11日の震災の日の夕方、ダニエル・ハーディングと新日本フィルは、予定通り、すみだトリフォニーホールでマーラーの交響曲第5番嬰ハ短調を演奏したという。その事実に啓発され、それを聴きにきた人々と、それぞれの人生と、心の模様を音楽を織り交ぜながら綴っていった小説だった。

マーラーにまつわる話も面白いのだけれど、次のような一節にも深く吐息をついた。

“なぜバロック音楽の巨匠の作品には、後代の音楽メカニズムを予見しているとしか思えないものがあるのか。これが永瀬が感じた、スカルラッティのソナタにある「何か」だった。スカルラッティのソナタは、のちのピアノソナタと異なり、一楽章しかない数分の小品だ。確かもともとは「ソナタ」という名称でもなく、王女のための「練習曲」として書かれたものではなかったか。・・・(中略)・・・つまり、ピアノで弾くことで初めて効果的に響く音楽が、ピアノという楽器がないうちから、スカルラッティの楽譜の中に、すでに書かれてあったということだ。”(「第一章」から)

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あの日、マーラーが

藤谷 治 / 朝日新聞出版

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by k_hankichi | 2015-11-13 00:44 | | Trackback | Comments(5)
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Commented by およう at 2015-11-13 08:33 x
藤谷氏の本がまた出版されたのですか・・・読まなければ^^
Commented by maru33340 at 2015-11-13 12:18
久しく藤谷さんの本読んでないなあ。
Commented by k_hankichi at 2015-11-13 23:14
maruさん、おようさん、いつもよりも更にストイックな感覚の小説です。あの本屋さんのような。
Commented by 木曽のあばら屋 at 2015-11-14 17:55 x
こんにちは。
事実をもとにしたフィクション、ということですが、
さまざまな人の生を描いた小説としてとても読みごたえがありました。
みな実在する人であるかのようでした。
しかしあの日に本当にコンサートを聴きに行った人、大変だったでしょうね。
Commented by k_hankichi at 2015-11-14 21:43
木曽のあばら屋さん、ご紹介ありがとうございます。あの日あのとき、その演奏を聴けた人々の気持ちは、こんな模様だったのだろうなあ。そう思い返します。自分にも重ねます。