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by はんきち

文学は実学である

読みかけで放ってあった『文学の空気のあるところ』(荒川洋治、中央公論新社)を読了。このなかで、次のようなことが書かれていて、とても感銘した。

“「文学は実学である」
 いまは自己愛の人たちが多いとされていますが、それは自分に飽きない、ということですね。いつまでも自分が好き。自分が大好き、他人というものに対して興味がない。「批判」という風土がうすれたので、さらに自分を変えるきっかけをなくす。
 自分をもし、そんなに好きならば、自分の父母はどんなふうに生きてきたのだろうかと、戦前、戦後の人々のようすにも興味を伸ばしていくはず。自分が好きなのだから。またそれだけではなくてアジアの人たちはどうだったのか、世界の人たちは、というゆうに、とても遠くにあるものにも目を向けるようになる。そこで自分の世界もひろがるし、ゆたかになる。自分が好きなら、そういうところまで自己愛を進めてほしい。いまの自己愛は、だから、自分に対する愛情が少ない、足りない人たちの、不十分な自己愛なのだと思います。自己愛が過剰ではなく、足りないのです。
 文学は実学だ、と僕は思います。人間にとってだいじなものをつくってきた。あるいは指し示してきた。虚学ではない。医学、工学、経済学、法学と同じ実学です。人間の基本的なありかた、人間性を壊さないためのいろんな光景を、ことばにしてきた。”(「詩と印刷と青春のこと」から)

静かに呼吸をするその息が、清くなってきた気がした。

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文学の空気のあるところ

荒川 洋治 / 中央公論新社

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by k_hankichi | 2015-10-08 06:54 | | Trackback | Comments(2)
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Commented by およう at 2015-10-09 00:26 x
読んでいないのではっきりは言えませんが、自分が好きかどうかは・・・断定できない。
Commented by k_hankichi at 2015-10-09 00:33
おようさん、この詩人は、僕のこころに沿ってきて、思いもかけぬほど癒されます。