2015年 10月 04日
厳しく過去と向き合う国『顔のないヒトラーたち』
これは、衝撃だった。ナチスが行ったユダヤ人大量虐殺のなかでも最悪がなされたアウシュヴィッツに関して、フランクフルトの地で自国民が自ら裁きを挑んだことを描いたものだった。それは、自分の父親世代の出来事を、若い世代が問いかつ正していく、身を切るような極めて真摯なる取り組みの過程。
Wikipediaによると次のようにある。
■フランクフルト・アウシュビッツ裁判(der Auschwitz-Prozessまたはder zweite Auschwitz)
1963年12月20日から1965年8月10日までフランクフルトで行われた裁判であり、ホロコーストに関わった収容所の幹部ロベルト・ムルカ(de:Robert Mulka)らをドイツ人自身によって裁いた裁判をいう。ニュルンベルク裁判において裁かれなかったナチスの過ちに対する責任が問われたことがきっかけで行われた。正式名称はムルカ等に対する裁判。
アイヒマン事件のことは、映画『ハンナ・アーレント』で知っていたけれど、あれがイスラエルの諜報特務庁(モサド)によってイスラエルに連行されての、国外での裁きだったということが、遅ればせながらやっと理解できた。こちらのものは、外国ではなく、ドイツでの自らによるものであるということが、とても重要である。
こういう意味で、では、われわれの国ではどうだったのか、ということが頭に上る。戦争裁判そのものは、すべてが戦勝国によって行われたものではなかったか。たとえ、それが東京で行われたものであろうとも。
自国民により自国の不正を厳密に暴くこと。そのことの崇高なるまでの大切さが、心に深く刺さった。一級国ということになるためには、どういうことが必要なのかということも分かった。
それはそれとして、裁判官の恋人、フリーデリーケ・ベヒト(Friederike Becht)は、とても溌溂としていて美しかった。映画『ハンナ・アーレント』で若きハンナ・アーレントを演じていたことを、あとから調べて知った。改めて、ため息をついた。
■スタッフ
監督:ジュリオ・リッチャレッリ
製作:ヤコブ・クラウセン、ウリ・プッツ、サビーヌ・ランビ
音楽;ニキ・ライザー、セバスチャン・ピレ
■キャスト
アレクサンダー・フェーリング:ヨハン・ラドマン
フリーデリーケ・ベヒト:マレーネ
アンドレ・シマンスキ:トーマス・グニルカ
ヨハン・フォン・ビューロー:ハラー検事
ヨハネス・クリシュ:シモン・キルシュ
ゲルト・フォス:フラッツ・バウアー検事総長
ロベルト・ハンガー=ビューラー:ウォルター・フリードベルク検事正
ハンシ・ヨクマン:秘書
ルーカス・ミコ:ヘルマン・ラングバイン
■製作:2014年、ドイツ。
■フリードリッケ・ベヒト(from http://agenturlux.de/weiblich/friederike-becht)
■映画トレイラー →https://youtu.be/DXuUHFBV1EA
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私も見に行くつもりです。