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by はんきち

『ホテルオークラ総料理長の美食帖』の吉田健一

ホテルレストランがどのような努力を重ねて、世界一のコンソメスープやフレンチトースト、行列のできるローストビーフを生み出したのか。その舞台裏が描かれた本だった。『ホテルオークラ総料理長の美食帖』(根岸規雄、新潮新書)。著者はこのホテルの第四代総料理長かつ取締役も務め、現在は顧問。

さまざまな創意工夫や、気配り、努力の数々はここでは書かないのだけれど、代わりに次の一節だけを残しておく。ソムリエをつとめた横山弘和さんによる思い出だ。

“あの当時で料理とワインの取り合わせで『さすが』と思わせてくださったのは、吉田茂首相のご子息、吉田健一さんでした。ワインリストをお持ちすると、決まって『今日はこの料理を注文したんだけれど、ワインは何がいいだろう。君はどう思う?』と言って料理との相性を聞かれるのです。私が答えると、『そうか、それじゃそのボトルを1本お願いしよう』とオーダーしてくださいます。たいていはお一人でお見えでしたから、ボトル1本は多すぎるはずなのですが、『残りは君の分だ』といって、私たちに味見させてくれます。私たちがボトルの最後まで吉田さんのグラスに注ごうとすると、『これは君の分だと言っただろう』と怒られる時もありました。そういうお客様は吉田さんお一人でしたが”(「レストラン・ウェディング誕生」から)

おお。他人がキープしていたシェリー酒だったかウイスキーだったかのボトルを、行きつけのバーから拝借して新潟まで行く間に飲み干してしまい、相手からかんかんに怒られたがどこ吹く風で通した吉田さんにも、こんな配慮ができたのか、と驚いた。

相手と場所をわきまえる、ということはこういうことなのだろうなあと、なんだか改めて納得した。

ホテルオークラ総料理長の美食帖 (新潮新書)

根岸 規雄 / 新潮社

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by k_hankichi | 2015-09-17 00:37 | | Trackback | Comments(4)
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Commented by maru33340 at 2015-09-17 06:23
かっこいいなあ、健一。
Commented by k_hankichi at 2015-09-17 07:34
そういう風景を見たかったですね。
Commented by およう at 2015-09-17 07:59 x
面白そうですね、こちらの本^^ レストランでの健一さん、さすがのマナー、ヨーロッパスタイルが身についている(^・^)
Commented by k_hankichi at 2015-09-17 19:46
おようさん、吉田さんはちゃんとしたところでは、ちゃんとしていますよねえ!