週末に京橋の国立近代美術館フィルムセンターで、『小早川家の秋』を観た。スクリーンで観る久々の小津作品である。
その直前、偶然に立ち寄ったLIXILブックギャラリー(京橋)で、遊映坐文庫の『小津三昧』を買い求めていて、川又昴という小津組のキャメラマンが書いた『完熟』というエッセイのなかの一節が、どうも気になって頭から離れない。
“小津映画の中では、僕は「東京暮色」(1957)が好きだ。小津さんの中では、一番怖い映画。実際に見せるわけではないけれど、ホームドラマの中で自殺を扱った異質な作品だ。挑戦をしている。「小早川家の秋」(1961)の原(節子)さんと司葉子さんが話すシーンも怖い。”
映画を観終えた記憶から繰り出しても、その「怖い」というシーンが思い当たらない。様々なシーンで現れる彼岸花の赤色と黛敏郎の音楽が怖かったくらいだ。
もう一度観るか、台本をどうにか入手して、この怖いという個所を知りたくて仕方がない。