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by はんきち

『福永武彦とその時代』(渡邊一民)・・・近代日本と西洋の相克

みすず書房の『福永武彦とその時代』(渡邊一民)を読んだ。すこし難しい構成で、冒頭だけ繰ってそのまま放ってあったものを、再び読み始めたら、なぜか頭にすいすいと入っていく。不思議な感覚に包まれる。

小説『風土』は1941年5月に執筆を開始され、完成は1957年3月だという。足かけ16年をかけてしるされたこの作品が福永の文学の原点だとする。

“登場人物がきわめてすくなく、人物の登場し活動する場も房州の海辺の別荘とその周辺だけに限られ、関東大震災直前から第二次大戦開戦までという時間の枠のなかにきっかりおさめられた、均衡のとれたひとつのスタティックな古典的小説であるのが『風土』であろう。(中略)桂昌三の文明批評を軸に展開するこの異例な内容の作品を、小説という形式のなかに破綻なくきれいにおさめ、ともかくも細部までじゅうぶん計算しつくされた堅牢な客観小説に仕上げられているのだ。『風土』以降の福永武彦のほとんどの長編小説が、主人公ないし話者の内面に沿って作品が展開していくのにたいして、最初の小説がこのような古典的なかたちで世に問われたことのうちに、その主題の作者福永武彦にとってのなみなみならぬ重さが秘められているのかもしれない。”(「Ⅰ 『風土』」から)

登場するひとたちのそれぞれに、ゴーギャンの絵が陰影をなげかけていくこの作品のことを、思い出していたら、学生時代の自分たちの日々とそれがいつしか重なっていった。

福永武彦とその時代

渡邊 一民 / みすず書房

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by k_hankichi | 2015-09-12 08:50 | | Trackback | Comments(4)
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Commented by maru33340 at 2015-09-12 20:23
気になってた。
この本は。
Commented by k_hankichi at 2015-09-12 20:29
作家たちとそのなかの世界に対して、ものすごい情愛をもたれている著者です。執着度が半端ではない。
Commented by およう at 2015-09-12 23:03 x
『草の花』が透かさず浮かんできました^^ 
Commented by k_hankichi at 2015-09-12 23:55
おようさん、良いですねえ!