東直子の『耳うらの星』(幻戯書房)は良かった。歌人によるエッセイ集だから、自他のさまざまな短歌が、そこかしこに散りばめられていて、そのたびに目が覚めるような思いをする。
塚本邦雄の次の歌にも感銘した。
エスキヤルゴオ ・かたつむり
エコルス ・樹の皮
エコオ ・うはさ
エスキヤルバン ・舞踏靴
エリス ・らせん
エリプス ・だえん
エスキナンシイ ・に扁桃腺炎
フランス語とその対訳が、それぞれ五七五七七の短歌になっている。
「愛撫」という次の作品もすごい。
ル・コニヤック・ラ・マニフィサンス
エ・ル・シイニユ・ラレニエ・ラ・ミ
ニヨン・エ・レ・シャムピニヨン・・
きつい酒・華美な品物・白い
鳥・蜘蛛と可愛い女ときのこ
ことしの秋の夜長は、歌集を繰って味わってみたくなった。