音楽、小説、そして酒を愛する方々との空間です

by はんきち

青が争う、と想像するこころ

吉野弘のエッセイ集『くらしとことば』(河出文庫)を読んだ。どれもがこころ落ち着く一篇なのだけれど、その理由として、清岡卓行が次のように評していることがわかった。

「戦後詩人たちの中でおそらく最も優しい人格。自分にきびしく、他人に寛大な、どこまでも静かに澄みわたろうとする批評。生命へのほのぼのとした向日的な温かさ」

とてつもなく優しい清岡さんからみてもこうなのだ。

エッセイのなかに、「浄・静」という一篇がある。次のような記述には、深く深く吐息をつくだけだった。

“「青が争う」となぜ「静」なんだろうと思われるかもしれない。確かに「争い」が「静かさ」をつくり出すなんて理屈に合わない。それで私は、青空を仰いでごらんとだけ云いたい。そこには、青が争っていないだろうか。青がひしめきあっていないだろうか。青が渦巻いていないだろうか。そしてそれが、張りつめた静かさとして、空に満ち満ちているのではないだろうか。空の青さは、決して青ペンキをぬった一枚の板ではない。底知れぬ深さをもち、嵐の海のようにひしめきあい、争うことで、あの美しい青さをつくり出している。”

週末にひとつ齢をとったのだけれど、こんな詩のような文章に会えただけでも、年月を重ねるということは素晴らしいものだと思った。

くらしとことば: 吉野弘エッセイ集 (河出文庫)

吉野 弘 / 河出書房新社

スコア:


  
[PR]
by k_hankichi | 2015-08-26 06:25 | | Trackback | Comments(4)
トラックバックURL : http://hankichi.exblog.jp/tb/24592519
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by maru33340 at 2015-08-26 06:50
そうか同い年になったんだ。
おめでとう。
僕も偶然今朝のブログに、台風の朝の青が混じる空の写真をアップしました。
Commented by k_hankichi at 2015-08-26 07:34
maruさん、奇遇ですね!
同い年、よろしく!
Commented by およう at 2015-08-26 10:21 x
なるほど・・青が争うとは気がつかない言葉でした^^
maru氏と同い年になられた\(-o-)/ 私の想像では学年が二年離れかな~なんて考えていましたが一年離れでしたー(^・^)
Commented by k_hankichi at 2015-08-27 07:04
おようさん、はい、気づかなかった言葉でした。
学年?いえいえそういうことではありません。