『和菓子屋の息子』が語る戦前

戦争中の杉並の映画を見終えたところで、そのころの東京・日本橋区米沢町(現在の中央区東日本橋)のことがでている随筆を読んだ。『和菓子屋の息子 ある自伝的試み』(小林信彦、新潮社)。

そのたりが本来、両国と言われたところだということだということも、ようやっと知った。唐辛子などで有名な薬研堀がここにあり、そこと隅田川、そして後の靖国通りを囲む地帯だ。東京の生粋の「下町」の一角であって、その暮らしの日々が描かれている。

それにしても、つぎのような事柄には驚いた。

“下町=<人情共同体>というのは、戦後のマスメディアによって作られたイメージである。その証拠に、古典落語に出てくる長屋の人物はそれぞれに仲が悪い。彼らがまとまるのは、因業な大家に対抗する時だけといってもよいだろう。そこにはある種のリアリティがあったわけです。<人情共同体>というカンチガイが発生した元は、1930、40年代の<大船庶民映画>にあったのではないか、とぼくは推測している。”(「下町には<通俗的な人情>はない」より)

いやはや、下町=人情とは、そういう虚構の夢の話だったのか。

もうすこし小林ワールドを掘り下げてみたくなった。

Google Map 両国薬研堀界隈→https://www.google.co.jp/maps/@35.6933643,139.786707,454m/data=!3m1!1e3

Goo古地図 ここから昭和38年の航空写真に移ることができる。 →http://link.maps.goo.ne.jp/map.php?MAP=E139.47.24.436N35.41.23.848&ZM=11
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Commented by maru33340 at 2015-08-24 05:50
いかにも小林信彦らしいシニカルな視点が面白いね。
Commented by k_hankichi at 2015-08-24 06:38
maruさん、この人の冷静なる眼差しが、良いです。
Commented by およう at 2015-08-24 06:47 x
この人の推測している下町人情は落語もそうですが作られた世界であることは前から何となく気付いていたのでした・・・Je<^!^>
Commented by k_hankichi at 2015-08-24 08:15
おようさん、そうなのですね。小林さんの本、追加で買い求めてしまいました。
Commented by s_numabe at 2015-08-24 12:58
下町=非人情は小林信彦の持論ですね。あれは『下町バビロン』だったか『流される』だったか、自伝的小説やエッセイで繰り返し力説されていますね。このところ似たような文章ばかりでしばらく遠ざかっていましたが、久しぶりに再読してみようかな。『ちはやふる奥の細道』みたいな抱腹絶倒物も、『夢の砦』のような屈折した自伝物も、かつて夢中で読み耽ったものです。
Commented by およう at 2015-08-24 23:14 x
はんきちさん、ちがうちがう^^ numabe氏がおっしゃるように下町=人情ではなくイコール非人情のことなんです。本当は・・・(^_^.) この方の本読んでみます。
Commented by k_hankichi at 2015-08-25 07:22
numabeさん、ありがとうございます。読んでいきます。
おようさん、はい、合点です。
by k_hankichi | 2015-08-24 00:45 | | Trackback | Comments(7)

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