今朝の夢は、自分の懐具合との相談をしたものの、頭に血が上って欲望に負けてしまったというもの。
海外で医師をしている友人が久しぶりに帰国して歓談。彼は最近、日本での移動用にホンダのノスタルジック希少車を手に入れたという。チョコレート色の塗装が輝く初代シビックだ。CVCCエンジンが搭載された軽やかな車体で、クリーム色のシートも美しい。
「君が欲しいというのならば、xxxxxxx円で譲ってあげてもよいよ。」
「いやー、二台目の車なんていまは不要だし、カッコいいけど、遠慮しとくよ。」
「そうかい、でもこの塗装色のシビックはレアものだぜ、乗り心地もリッチな感じなんだ。」
「そうか、でもいいや。」
「気になったらいつでも連絡してくれよ。安くしとくぜ。」
そう言い残して、彼は夕暮れの道に消えた。夜が更けていった。
「あの車、格好良いな。」
「ピカピカしたチョコレート色が堪らないなあ」
「レアものということ、値も上がるかもしれないよな。」
欲望が渦ののように頭の中を駆け巡った。朝になるのが待ち遠しかった。
僕は、明るくなるや居てもたってもいられなくなり、空港から飛び立とうとしていた友人を捕まえた。xxxxxxx円を渡した。
「車の鍵は、○○という男に言ってくれ。名義変更の書類なども彼がやってくれる。」
そして彼は去っていった。
昼下がり。
自分のものになった車を前にして、茫然としていた。なんとも、みすぼらしいボロ車が目の前にある。どうして初代シビックにノスタルジーを覚えたのか。魔法にかけられたかのような面持ち。
どう見ても無駄以外の何物でもない。どうみても、欲望を掻き立てられることはない。
頭に血が上った、血迷ったことがもはや信じられない。いったいどういう論理でそうなったんだ。
わかっている。論理ではない。空想が妄想に変わっただけなんだ。
なんじ、惑わされるべからず。
キリストが言ったか言わなかったか、わからないけれども、自分の不甲斐なさになんともガックリした。
これが現実にならなければよい。そう願う朝だった。