『6才のボクが、大人になるまで。』・・・一瞬ということの意味。
今年の米国アカデミー賞は『バードマン』を賞賛するぐらいだから、審査員のことを疑っていた。そして、そのわきで二番手に評価された映画のことも、題名からして遠巻きにしていた。『6才のボクが、大人になるまで。』・・・何とも人を食っている。何を考えているんだ。
家の近くの二番館(この時期、三番館かもしれない)でそれがかかると知り、ちょっと時間があったので足を向け、期待せずに観始めたところで、原題が“Boyhood”であると知った。おお、こりゃ、6才のボクが・・・ということを語ろうとしているわけじゃあないのか・・・。背筋を正してスクリーンに目を注ぎ始めた。監督の名前が出てくる。リチャード・リンクレイター。
な、なにぃっ!!!!・・・僕はますます驚いた。僕の生涯ベスト2に輝く映画作品の監督だった。自分の無知さ加減に我ながら呆れた。バカバカバカ。
監督は、リチャード・リンクレイター。『ビフォア・サンライズ』(1995年)、『ビフォア・サンセット』(2004年)、『ビフォア・ミッドナイト』(2013年)を生み出した男。
・『ビフォア・サンセット』を観たとき →
http://hankichi.exblog.jp/15065811/・『ビフォア・ミッドナイト』を観たとき →
http://hankichi.exblog.jp/20789444/。
『ビフォアxxx』シリーズで見せた、長廻しのカットの技法がここに生きていた。長廻しというが、とにかく一つのシーンは、長い対話のやりとりがずっと続き、そこにはカットがまったく入り込まない。だからそれは目の前で起きていることのように思える。観客は出演している人たちと、同じ時間の流れを共有する。それぞれのシーンの一瞬一瞬が光り輝く。俳優たちもキラキラしている。イーサン・ホークが格好良いことは、言うまでもない。
その彼が残そうとしたもの。僕にはよくわかる。賞を取っていて色々と既に書き連ねられていることだろうから、一番の印象だけを書く。それは、一言でいえば「一瞬ということの意味」だ。
映画の最後で、やり取りがある。大学に入学した主人公メイソンは寮で知り合った仲間とともに出かけたBig Bend National Parkで、「一瞬というのは、どういうことなのかしら?」というようなことを女学生から尋ねられる。彼はそれに対して、次のように応える。
"The moment is constant. The moment seizes us".
(一瞬というのは不変なものなんだ。[一瞬というものを僕らが掴むんじゃなく]あっちのほうが、僕らを掴むんだ。)
これがこの映画の集大成だと思った。リンクレイターの名作の数々に流れている、貴重な想いだ。
時間というものの流れのなかに乗って生きているということ、そのなかで人と人を出逢わせてくれるということ。奇跡の軌跡のかずかず。幸せというものはこういうことなのだ。
■スタッフ
監督、脚本:リチャード・リンクレイター
製作:リチャード・リンクレイター、ジョナサン・シェアリング 、 ジョン・スロス 、 キャスリーン・サザーランド
音楽監修;ランドール・ポスター
■出演
メイソン:エラー・コルトレーン
メイソンの母:パトリシア・アークエット
サマンサ:ローレライ・リンクレーター
メイソンの父:イーサン・ホーク
トミー:イライジャ・スミス
祖母:リビー・ヴィラーリ
ミンディ:ジェイミー・ハワード
ランディ:アンドリュー・ヴィジャレアル
■製作
2014年、アメリカ
◼映画を観終えたところで、飲んだコーヒーか旨かった。
■予告編 →
https://youtu.be/sM5RaDl2Z4g■英語版予告編 →
https://youtu.be/Y0oX0xiwOv8