音楽、小説、そして酒を愛する方々との空間です

by はんきち

『成瀬巳喜男 映画の面影』の絶妙

川本三郎による『成瀬巳喜男 映画の面影』(新潮選書)を読了。成瀬の映画を深く観てきた人だからこその言葉に溢れている。映画『浮雲』についても、次のように書く。

“千駄ヶ谷駅前で再会したあと、「行くところがない」二人が行くところは、結局は、伊香保温泉。そこで正月を迎えることになる。世の中からますますはずれてゆく。(中略)「行くところがない」二人は旅館で酒を飲みながら冗談まじりに心中の話をする。はじめて映画のなかに死があらわれる。死の影がさす。富岡は平俗にいえば、女蕩らしのところがある。かげのある知的な二枚目、森雅之に合っている。一種の色悪。林芙美子は森雅之を想定しながら『浮雲』を書いたのではないかと思わせるほど、この名優は富岡というくずれたインテリにふさわしい。”(第6章 「私たちって、行くところがないみたいね」より)

こういう風情を描けるところは、小津安二郎でもなく、木下恵介でもなく、黒澤明でもない、成瀬ならではなのだと思った。

成瀬巳喜男 映画の面影 (新潮選書)

川本 三郎 / 新潮社

スコア:


  
[PR]
by k_hankichi | 2015-06-03 00:38 | | Trackback | Comments(3)
トラックバックURL : http://hankichi.exblog.jp/tb/24190735
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by maru33340 at 2015-06-03 05:44
この本は読まなきゃね。
Commented by k_hankichi at 2015-06-03 06:46
成瀬の映画を、実に深く読み込んでいる人でした。
Commented by およう at 2015-06-03 09:43 x
森雅之はそういう意味でも名優でしたねー(^。^)