柚子湯に冬を慈しむ

久しぶりに家の一番風呂に入ったら、湯の中に柚子が三つ浮いていて、あれ?と思った。そして、ああ今日は冬至だったのだ、と漸く気づいた。

湯気に柚子の香りが乗って、風呂場のなかが得も云われぬ風情になる。掛け湯をすると、肌がすべすべとしてくる。

湯の中に身を沈めてみれば、ぷかりぷかりと柚子が身体の周りに寄ってくる。あれあれ引力があるのかしらんと思ったりして、なにか気持ちが緩んでいく。

柚子を掴んでみる。しっかりとしている。すこし掌で握ってみると、じんわりと柚子の汁が出てくるさまがわかり、肌にしんなりと沁み通ってさらにすべすべとしてくる。皮が割れないぐらいの強さで三つとも握り絞ってみる。湯殿に芳ばしい香りがさえらに満たされていく。

野球のボールの要領で湯の中で投げてみる。するとそれは思った以上に深くまで沈んでいき、そしてゆっくりと浮かんでいく。また投げてみる。三球続けて投げてみる。

どの柚子もシュート回転のようなかたちで奥底のほうにまで送られて、それがゆっくりと昇ってくる。柚子は依然として丸々としていて、しかしその中身には暖かい湯が吸い込まれていることが想像できる。

子供の頃のことが頭に浮かぶ。湯船が木で出来ていたあの家の風呂場の、薪の香りが漂うなかで、弟と遊んでいた。キューピーの指人形もあったっけ。

柚子は冬を慈しみ、星霜を重ねた日々を思い出させる。
  
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Commented by およう at 2014-12-23 13:19 x
冬至の夜のリラックスしている貴殿 ウフッ!
Commented by k_hankichi at 2014-12-24 22:08
ひさびさにリラックスしました~。
by k_hankichi | 2014-12-23 00:11 | 街角・風物 | Trackback | Comments(2)

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