インドの喧騒に圧倒されている。人の数は半端ではなく、建物は美なものと醜なものがモザイクのように入り混じっている。英語は通じるにもかかわらず中国以上に疲れるのは、空気が熱いからなのではなく、人の視線のなかにグイグイと凝視して差し込んでくるような相手の眼差しによるからかもしれない。
そして飛行機のなかで一本だけ観た映画のことを思い出していた。『秋日和』(小津安二郎監督、昭和35年作品)。日本の人々の(というかこの監督の作品の)会話、仕草、景色、テンポが、いかにゆったりとしているのかということに改めてしみじみと感じ入る。
登場している司葉子のことを観ていて、ああ、この人は、立ち姿が真木よう子がそっくりだなと思ったりしていた。そして、『秋日和』を現代の俳優が演じたら、だれがよいのだろうか、というようなことまで考え始めていた。
三輪秋子:原節子 →若村麻由美
三輪アヤ子:司葉子 →真木よう子
三輪周吉:笠智衆 →加藤剛
間宮宗一:佐分利信 →渡辺謙
間宮文子:沢村貞子 →田中裕子
佐々木百合子:岡田茉莉子 →篠田麻里子
田口秀三:中村伸郎 →小日向文世
田口のぶ子:三宅邦子 →池上季実子
平山精一郎:北竜二 →堤真一
後藤庄太郎:佐田啓二 →西島秀俊
うーん、何か違うなあ・・・。というか、あの風情を出せる真の演技力っていうものは、あるだろうか。
こうなると、逆に夜も眠られなって明日からの仕事に支障がでそうで、気が気でない。
■『秋日和』(小津安二郎監督、昭和35年作品)
http://www.youtube.com/watch?v=8QSIB7EOKSk