剃刀・・・理髪店の矜持

理髪店には前の冬に一、二度足を運んで、その快活さに思わず頬を緩めていたのだけれど、ちょっと遠い場所にあることから、なかなか通えていなかった。

久しぶりに、そういった理髪店に足を運んだ。実は家のすぐ近くに、それはあった。どうしてそんなに見過していたのかと思えば、それは街並みのなかで余りにも控えめで、景色のなかにまるっきり溶け込んでいたからだ。

一見さんの僕だったのだけれど、マスターは暖かく迎えた。

「どのように刈りますか」
  「耳に髪が触れないように」
「後ろは刈り上げますか」
  「普通に」

といったやりとりが続く。

「これまではどこに行かれていたのですか」
  「xxx」
「ああ、あそこはカットサロンですね」
  「はい、そうです」
「剃刀は使えないでしょ」
  「そういえばそうですね」
「親父さんは確か理容師上がりだったから、剃刀は本当は使えるのだけれどね」
  「そうですね、そういえば初めの頃は。しかし今は若者が刈っているからなあ」
「そうでしょうねえ・・・」

いまさらながらなのだけれど、理髪店主にとって、剃刀は矜持なのだということを心底から知った。

もう今後はカットサロンには行くまい。

そう誓うまでに時間はかからなかった。
 
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Commented by saheizi-inokori at 2014-11-01 22:04
髪の長かった頃美容院に通って若い子たちと仲良しになって落語に行ったりしたのです。
それでほとんど髪の毛がなくなった今も男の子のやってる美容院です。
そろそろ床屋に替えようかな。
Commented by k_hankichi at 2014-11-02 15:26
saheiziさん、美容院派なのですね。それぞれに良いところがありますね。
by k_hankichi | 2014-11-01 12:08 | 街角・風物 | Trackback | Comments(2)

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