『モノ書きピアニストはお尻が痛い』(青柳いずみこ)のマーラーとドビュッシー

東京散歩の往き帰りの車中で『モノ書きピアニストはお尻が痛い』(青柳いずみこ、文春文庫)を読了。いつもにも増して、鋭き洞察力とウイットに感銘する。たとえばつぎのようなところで。

“ マーラーの書いた音楽の中で一番ドビュッシーを連載させるのは、第九交響曲の最終楽章だ。ここでは、すべての弦楽器が弱音器をつけて弾かれ、Des-durの和音のかすかなふるえとともに、「死滅するように」消え去っていく。この有名なアダージョを聴いていると、私は、無意識のうちに、この音たちはこのあとどこへ行くのだろう・・・・と考えてしまう。
 アンデルセンの人魚姫のように、海の泡になって天国にのぼっていくのか、それとも、さまよえるオランダ人のように、成仏できないまま永遠に海上をさすらいつづけるのか。
 なんとなく、無事天国に行きつけるような気がする。
 実は、ピアニシモで消え入るように終わるのは、ドビュッシーの専売特許なのだ。彼の楽譜には、至るところに、フランス語で書きつけた「presque rien(ほとんど何もなく)」や、「a' peine(かすかに)」の指示がある。ジャンケレヴィッチの表現によれば、「生と死、存在と非存在、時間と非時間の敷居の上」にある、ドビュッシーのピアニシモ。”(「ピアニスト的作曲家論」より)

青柳さんの著作を読むと、音楽や芸術についての視点が深く広く据わってくることに気づく。

モノ書きピアニストはお尻が痛い (文春文庫)

青柳 いづみこ / 文藝春秋

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Commented by maru33340 at 2014-09-29 08:17
読んだはずなのにすっかり内容忘れてるなあ(>_<)
Commented by k_hankichi at 2014-09-30 07:36
青柳さんの明晰さにいつも感銘します。
by k_hankichi | 2014-09-29 00:34 | | Trackback | Comments(2)

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