『優雅なのかどうか、わからない』(松家仁之)・・・The Beginningの予感

本のカバー表紙が、1967年のLime 誌のカバーを飾ったミア・ファローの写真で、その美しさにははっと息を飲む。Alfred Eisenstaedtによる(TIme & Life Pictures/Getty Images)。
http://timelifeblog.files.wordpress.com/2014/02/140204-mia-farrow-life-cover-1967.jpg
松家仁之の第三作目の小説『優雅なのかどうか、わからない』(マガジンハウス)のことだ。帰国する際の機中で読了。

この作品を一言で表すとすれば、「静謐な生活を超えようとする、時と場を貫く優しさと躊躇いの交錯」のようなものだと思う。

主人公の岡田匡は、自らが採った生きざまが原因で妻と離婚し、一人息子も米国の大学院に留学して、吉祥寺の古い日本家屋に一人住むことになる。そこは小津映画に出てくるようなたたずまいの家だ。その家は、匡が自由に改造してよいということになる。

そうやってひっそりと暮らし始める匡なのだが、ふとした偶然で別れた女・菅原佳奈と再会してしまう。年下の彼女とは終わった関係であったのに、心に静かなさざ波が立ち始める。躊躇いと意思(密かな切望)の淡い交錯。佳奈の父親の病気発症、息子の変化などがその合間に織り込まれ、しかし、匡はそれぞれを、静かに受け留めていく。

隠遁生活を抱いていた匡のなかに芽生える新たなる設計図。それは静謐を超え、もはや優雅とはいえない。あらたな愛の成就に向けた強い意思だ。

かつて観た映画の最後に”The End”の代わりに“The Beginning” と示されて終わったものがあったのだけれど、そういった感覚で終わる作品だった。
 

優雅なのかどうか、わからない

松家 仁之 / マガジンハウス

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Commented by saheizi-inokori at 2014-09-09 09:46
どうしようかな。
年寄りの恋愛?
Commented by k_hankichi at 2014-09-09 18:55
Saheiziさん、まあそうなのですが、相手は若いです。
Commented by およう at 2014-09-09 20:37 x
はんきち殿やはり少しお疲れみたいです。ゆっくり休養なさってください。テニスの錦織選手負けても清々しい表情でしたね^^
The Beginningはほどほどに(^-^)
Commented by k_hankichi at 2014-09-09 21:31
錦織さんの顔は、ほんとうにすがすがしいです。
by k_hankichi | 2014-09-09 00:17 | | Trackback | Comments(4)

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