TRIZの思想の平易な展開・・・『インサイドボックス 究極の創造的思考法』
これまでの固定観念を捨て、定石やパターンから脱し、枠の外(アウトサイドボックス)でものを考えなければ、あたらしい発想なんて生まれないよ、と言い含められ続けてきたような気がするが、この書はそれと正反対の考え方で、まさにそういうところに新たな発明が生まれる、ということを教える。『インサイドボックス 究極の創造的思考法』(ジェイコブ・ゴールデンバーグ、ドリュー・ボイド、文藝春秋刊)のことだ。
TRIZ(「とぅりーず」と発音、Teoriya Resheniya Izobretatelskikh Zadatch)といえば、ロシアのゲンリック・アルトシューラーが生み出した思考法で、問題解決のステップを明示し、漏れぬけダブりを排除し、早合点や思いこみを排除する。近年、発明創出のための道具としても使われている。この本は、このTRIZを一般の人たちに分かりやすく説明したもので、途中で嫌になったり放り出したりせずに読み通せるものだった。
画期的なアイデアを出すためには、できるかぎり遠くの世界にさまよい出よ、という考えとは真逆で、枠のなか、すなわち制約の中で考えつくせ、あなたのなかに答えがある。
■引き算:旅客サービスを排除した格安航空会社、インナーイヤー・ヘッドホン、「iPodタッチ」など。
■分割:テレビ、ビデオのリモコン、インク交換型プリンターなど。
■掛け算:補助輪つき子供用自転車、ピクチャー・イン・ピクチャー機能付きテレビなど。
■一石二鳥:「オドイーター」性能つき靴下、日焼け止め機能付き保湿クリーム、バスの車体広告など。
■関数:雨量感応型ワイパー、スマートフォンの近隣探索機能など。
「閉じた世界」のほうが創造的である。
そう知った瞬間、ぼくも世紀の発明家になれる気分になった。