一番妖しい輩は・・・侮れない時間と場所

みちのくの駅の待合室は、時と場所を忘れてしまうよう。30分に一本しか列車が通らないのにも関わらず、そこには四人しか居ない。

ときは無言のうちに過ぎる。しかし空気は普通ではない。

右隣の老人はオックスフォード・ワールド・クラシックスの洋書を一心不乱に読み続ける。Fyodor Dostoyevsky, "Crime and punishment"だ。

左の学生とおぼしき男は、椅子を数席占領しながら、人体解剖図やリンパ液の循環図やらを広げ、試験問題をバサバサとめくり続け頭を掻きむしる。

前の男子高校生は握り飯を頬張り、ぎらぎらした目付きで僕を睨む。

こちらはといえば、エッセイを読んでいる。

吉田健一のエッセイを読み続けているから、意味の分からない笑いや、時折はるかな昔を想うような仕草や、にやけた顔やら変幻自在だ。

一番妖しいのは実は僕なのだということに、ようやっと気づいた。
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Commented by saheizi-inokori at 2014-05-01 19:27
時計をぶら下げたウサギならぬタヌキあたりが飛び込んで来るのかな。
Commented by およう at 2014-05-01 23:03 x
創造力を書き立てられます。賢治の世界のように・・・。
『プラットホームの四人』^^
Commented by maru33340 at 2014-05-02 09:53
実に皆怪しく魅力的な風景なり。
Commented by k_hankichi at 2014-05-02 10:36
saheiziさん、時間が止まった場所です。
おようさん、みちのくは、小説仕立てです。
maruさん、妖しさと怪しさと、ふたつともにわれにあり。
by k_hankichi | 2014-05-01 18:29 | 街角・風物 | Trackback | Comments(4)

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