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by はんきち

「北国の帝王」のごとく

みちのくで、鉄道に乗ろうとすると、少し不便なときがある。通勤通学時間帯は一時間に二本程度は走っているものの、昼間は一時間に一本だ。乗り過ごすと一時間後になる。

無人駅は、吹きっさらしのホームがあるだけで、外で待っていても寒いだけだ。だから客のほとんどは、改札口の横にある小さな待合室に座って居る。向かい合わせの他人との距離が近く、居心地が悪い。

「ピポーン、上り方向に電車がきます」という合成音のアナウンスが流れる。客は微動だにしない。僕は焦る。顔色を伺う。みな動かない。レールを伝わって車輪の音が響いてくる。みな動かない。逆方向に乗りたいのだな、そうか僕は乗らねば。この窮地を脱せねば。

逃げるように僕はホームに急ぐ。列車が来た・・・。

かと思ったら、目の前を轟音とともに貨物列車が駆け抜けている。十両、二十両、三十両、四十両・・・。いくらでも続く。果てしなき車列。

中学生のころに観た映画『北国の帝王』を思い出した。アーネスト・ボークナイン扮する貨物列車の車掌が、無賃乗車をし続ける男リー・マービンと対決を繰り返す。鎖や斧までとびだす熾烈な闘い。しかしまことに単純な筋書きだ。

しかしこの目前の貨車に飛び乗りたい。北国の大地を駆け巡りたい。敵はどいつだ。鼻を明かしてやりたい。

ぼくはいつしかリー・マービンになっていた。

■「北国の帝王」 →http://youtu.be/5jn-ZS7g8xs
  
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by k_hankichi | 2014-03-20 07:55 | 街角・風物 | Trackback | Comments(2)
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Commented by s_numabe at 2014-03-20 14:36
あの走る貨車の屋根の上での対決シーンは凄かったですね。仁王立ちになった両雄が恐ろしい形相で睨み合う。単純なストーリーだけれど骨太な、本物の「男の映画」でした。
Commented by k_hankichi at 2014-03-20 18:56
numabeさん、そうです。必死の二人のたたかい。あの種の興奮は、あとはチャールズ・ブロンソンの出る映画ぐらいでしょうか。