雨の金曜日の追憶

昔から雨の金曜日が苦手だった。学生時代のことをよく思い出す。

晴れの日は家から駅まで自転車で爽快に走るが、雨が降ればバスになる。決まってそういう日は道路は渋滞。途中には京成電鉄の踏切がある。市川真間の踏切だ。

側道から前から後ろから、車がうじゃうじゃと集まってくるわ、歩行者が無理やり横切ろうとするわで団子状態になっている。金曜日は何故かトラックやらが多いので、さらに込み入っている。

普段ならば、踏切のバーを目前に、自転車部隊の先頭を切って、バーがあがらないうちに渡ってしまう。

しかしバスはちがう。雨日さらに異なる。緩慢なバスは動きだすが、すぐにまた踏切が遮断されてしまう。

そんな車中。床はオイル掛けされており、胸焼けするような匂い。換気が悪い。それが倍加される。

座席は横座りの長椅子だ。鬱陶しい空間。雨粒が背中側の窓に打ち付けられ反響する。あそこに座っているのは、小学生のころの級友か。理解に苦しむ。そのハマトラのハイソックスはなにものだ。

駅前に近づく。映画館の目の前だ。つり革につかまるサラリーマンの目の輝きがかわる。雨に濡れた魚の目だ。座席に座る勤め人も、そわそわしている。日活の映画館なのだ。学生の僕らは素知らぬ顔を決め込む。

雨に濡れた室内に魚の目の男たちは漂い、たゆたっている。
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by k_hankichi | 2013-10-25 12:39 | 街角・風物 | Trackback | Comments(0)

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