受難曲に昂ぶらされて、東京カテドラルまで

土曜日は朝にバッハのマタイ受難曲を聴いているうちに、ブログ知人が最近訪れたという目白の東京カテドラルのことを思い出し、無性に行きたくなった。

ちょうど新宿に家人と所用があったので、それを済ませたあと、高田馬場までJRで移動。そこから連れだってウォーキングを始めた。このあたりは僕の友人が大学の低学年時代に下宿していて、そこを度々訪れていたことも思い出す。喜久井町ということは覚えていたが、なにせ35年も前のことで、それからは来たことがなかったから、うっすらとした記憶をたどる旅のようだ。

町並みに名残りはあるものの、ずいぶんと変わっている。ああこんなところに神社があったのか、とか、おおここに銭湯があるぞい、と嬉しがったり。路地裏をすこし散策したり、夏目漱石生誕の碑を拝んだりしながら、たしかあの下宿はこのあたりだったよなあ、と思う辺りは、理工学部の研究センターの建物になっていて、大切な記憶が時間を超えられずに苦しんでいる。

後ろ髪を引かれ引かれしながらも、漸く大隈講堂にたどり着く。大学というところはいつ訪れても、なにか心がわくわくする。

新目白通りを渡り、神田川を超えると丘が目の前だ。胸突坂のたもとでは、関口芭蕉庵のなかを少し散策。江戸・明治の空気がそのまま止まったかのような幻視。

急坂を上りしばらく歩くと、カテドラルの鐘楼が見えてくる。近づいていく。近づいてくる。ドームの屋根が真夏日の太陽の光を受けて銀色にきらきらと輝いている。捩じられた四本の双曲線が交錯している外観。八面の捻じれた壁が天空に向けてそびえたつ。上空から眺めれると、頂上のかたちは、正に十字になっているという。周囲をぐるりと回るように歩いていくと、建物の形状はどんどん変わり、芸術と数学が掛け合わさったような設計の素晴らしさに、またまた感動する。

建物の内部に入る。と、なんとパイプオルガンが演奏されているではないか。曲名はわからなかったがバロックの音階がおごそかに太く長く反響する。自然と心の奥底にその音魂は沈みゆく。

聖堂の天井を見上げると、そこにも捻じれた双曲線のなせる美を、ひしと見ることができる。知らぬうちにあんぐりを口をあけている自分に気づく。祭壇の前には、細長く高くそびえる窓があり、その形は十字架だ。最後の晩餐をあしらったものだというそのガラス模様も素晴らしい。

こんな崇高な建築が1964年に出来ていたとは。この界隈に来たことはあったのに、カテドラルに気づかなかったことが不思議なのだけれど、ブログ知人にただただ感謝。

帰途は、カテドラルの前から「白61」系統で新宿駅まで都バスの旅。途中、いつか行きたいと思っていた曙橋の讃岐うどん屋を発見したり、影も形も消えた厚生年金会館の跡地を横目に在りし日の演奏会の数々を想いだしたり。意外なる楽しき時間になった。

小田急線の車窓からは、丹沢山系に沈みゆく夕日がみえ、僕は、遥か彼方のカテドラルの屋根が橙色に輝いているくだろうその姿を想像していた。

※東京カテドラル →http://cathedral-sekiguchi.jp/
c0193136_2133622.jpg
c0193136_21335282.jpg
c0193136_21305622.jpg
c0193136_21352283.jpg
c0193136_21362585.jpg
c0193136_21375677.jpg
c0193136_21395195.jpg
c0193136_21442099.jpg
c0193136_21473742.jpg
c0193136_21455186.jpg
c0193136_21485610.jpg
c0193136_21495365.jpg
c0193136_21511393.jpg

[PR]
by k_hankichi | 2013-10-13 00:28 | 街角・風物 | Trackback | Comments(6)
トラックバックURL : http://hankichi.exblog.jp/tb/20831424
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by およう at 2013-10-13 09:31 x
ムムムム(*_*)、わが古里を歩いていらっしゃるー!
かなりの距離です、馬場から早稲田を通ってカテドラルまでは・・・。お疲れ様でした^^お風邪ぶり返さないように・・・。
Commented by k_hankichi at 2013-10-13 10:20
おー。おようさんのふるさとなのですね。とすると、友人が暮らしていたところにも近い・・・。おーい、maruさん。
Commented by maru33340 at 2013-10-14 05:36
はあい(^^)/
そうだったんですね。
若かりし日、もしかすると接近遭遇していたかも知れませんね。

過ぎ去りし日を思い出す夏目坂
(丸翁)

Commented by およう at 2013-10-14 09:59 x
えーー!うっそー!ほんとー?
接近遭遇していましたら「maruさまー、サインしてー!」

武蔵野からこのような下町へ・・・、父の趣味でした^^
Commented by s_numabe at 2013-10-14 22:51
hankichi さま、さっそく東京カテドラルへ足を運ばれたのですね! 高田馬場駅からはるばる徒歩で、しかも早稲田大学はもちろん、漱石生家跡や関口芭蕉庵にも立ち寄られたとは脱帽です。ちょっとした旅ですね!
カテドラルで聴けたというオルガン演奏(羨ましい!)は、きっとお二人の熱心さと健脚に対するご褒美だったに違いありません。
Commented by k_hankichi at 2013-10-15 00:25
numabeさん、この旅のきっかけは、numabeさんのブログです。あの記事が僕をいざないました。ありがとうございます。確かに、オルガンは褒美のような美しさでした。


音楽、小説、そして酒を愛する方々との空間です


by はんきち

プロフィールを見る

検索

お気に入りブログ

幻戯書房NEWS
梟通信~ホンの戯言
新・クラシック音楽と本さ...
Oyo-の日々
私たちは20世紀に生まれた

最新のコメント

ですよね~!
by k_hankichi at 19:01
うん、これは実に名曲だなあ。
by maru33340 at 06:54
そうなんです、びくりした..
by k_hankichi at 22:38
ああ、吉田さん確かに似て..
by maru33340 at 08:05
おようさん、おー凄い‼️..
by k_hankichi at 19:33
見せて戴きました。監督の..
by Oyo- at 18:29
論理性が際立っています。
by k_hankichi at 08:46
確かこの本文庫で持ってい..
by maru33340 at 07:41
まさに、そうです。断固と..
by k_hankichi at 21:45
maruさん、岡田さんは..
by k_hankichi at 21:35

記事ランキング

以前の記事

2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 02月
2009年 01月

カテゴリ

全体

クラシック音楽

映画
ポップス
テレビ番組
美術
一般
社会
食べ物
街角・風物
夢物語
未分類

外部リンク

その他のリンク

■放送局
・WQXR-New York's Classical Music Radio Station
・Arte TV ドイツ語
・Arte TVフランス語
・NPR(米国ナショナルパブリックラジオ)
・NHK Classic
・BBC Classic

■Blog
・木曽のあばら屋
・先見日記
Hankichiをフォローしましょう

■音楽関連
・ディグるYou Tube
・月刊ショパン
・HMV クラシック
・Tower Recordsクラシカル
・クラシック倶楽部
・HMV評論家エッセイ
・Public Domain classic
・Patricia Kopatchinskaja
・庄司紗矢香
・青柳いずみこオフィシャルサイト

にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

■書籍、書評
・【ほんぶろ】
・朝日新聞書評
・松丸本舗
・往来堂書店
・フィクショネス
・BOOK TOWNじんぼう
・青空文庫 Aozora Bunko
・BOOK Asahi.com
にほんブログ村 本ブログへ

■酒
・酒とつまみ/酒飲み人生謳歌マガジン
・間口一就 まぐちかずなりの、ウェブサイト
・酒文化研究所
・鹿児島県酒造組合
・英国スコッチWhisky協会
・英国ジン・ウオッカ協会
・フランスワイン公式サイト
・ボルドーワイン委員会
・シャンパーニュ地方ワイン生産委員会
・シャンパーニュメゾン協会
・ブルゴーニュワイン公式サイト
・ロワールワイン公式サイト
・スペインカヴァ協会公式サイト
にほんブログ村 酒ブログへ

■TV
・不毛地帯
・のだめカンタービレ フィナーレ
・それでも、生きてゆく
・問題のあるレストラン

■映画
・蓮實重彦「あなたに映画を愛しているとは言わせない」
・Ozu-san.com
・昔の映画を見ています

■写真、技術
・ある技術者の写真アート
・リソグラフィGuru

■街角探検
・昭和毎日
・横浜都市発展記念館
・web東京荏原都市物語資料館
・世田谷文学館
・MORISHINS MEW (ARCHHITEC)
・「ハマちゃん」のがらくた箱
・ぽこぺん都電館

ブログランキング・にほんブログ村へ

最新のトラックバック

蜜蜂と遠雷
from 天竺堂の本棚
『ミカドの肖像』
from 観・読・聴・験 備忘録
映画「顔のないヒトラーた..
from みなと横浜みなみ区3丁目
日本にも潜んでいそうな ..
from 梟通信~ホンの戯言
安倍政権NO!大行進&「..
from 梟通信~ホンの戯言

ブログパーツ