自分探しの旅の果ては・・・不屈の精神のリーアム・ニーソンに自己を重ねる映画『アンノウン(Unknown)』
リーアム・ニーソンといえば、映画『シンドラーのリスト』で有名なアイルランド系の演技派俳優だ。
しかし『96時間(Taken)』では、アクション俳優として強い意志と肉体をアピールしている。パリに遊びに出かけた娘が軽はずみな行動から誘拐され、快楽の巣窟に売り飛ばされかけたところを、あらゆる手段を講じて救い出す。
僕はこんなことは出来ないから、このあいだ、外国に出かけるという家人に前もってこの映画を観せて、「世の中はおっかなく、恐ろしい男どもがいるので心して旅せよ」と言って戒めておいたら、それが効いたようだった。
さてそのリーアム・ニーソンの近作『アンノウン(Unknown)』。2011年のアクション映画が、今週テレビで放映されていた。昨晩遅く、疲れた身体のままリビングで横になりながら観はじめたら、息をもつけぬサスペンス系アクション作品で、思わず精神が昂ぶり見入った。
ストーリーは、バイオテクノロジー学会に論文発表するために、妻同伴でマーティン・ハリス教授(リーアム・ニーソンが演じる)がベルリンに降り立つところから始まる。
マーティンは、空港に荷物(パスポートなど一式入ったアタッシュケース)を忘れてしまい、それを取りに戻るところから急展開する。彼はタクシーを急がせるが、事故に遭い車は橋の欄干を突き破って川底に沈みゆく。
なんとか助けられた彼は数日間昏睡状態で、目覚めた彼の前に現れたのは、なんと自分の名前を語る別人だった。その別人にマーティンの妻は寄り添い、学会の講演をし晩餐会にも出ようとしている。
彼はなにものなのか?なぜ妻は自分をわからないのか?どうして学会の学者たちやホテルの人々は自分のことを分かってくれないのか。
その謎を説き明かすべく街を奔走し、彼を追い詰める敵に対し戦っていく。そして少しずつ真実が明らかになってゆく。
彼が最後に取り戻した自分とは一体何だったのか?
シニカルさも兼ね備えた、サスペンス・アクション・ヒューマンが入り交じった佳作ドラマだ。
「ほんとうの自分」を探しましょう、というようなあまっちょろい自分探し願望派は、まずこの映画を観てから物事を語るとよい。