先週、故あって成田まで行ったがその帰り道に家人から、「“こめやの羊羹”ってこんなとこでも宣伝してるのね」、と尋ねられて絶句した。
「それは、“よねや”だよ。そしてしかもこの地(成田)発祥の羊羹屋だから当たり前だよ」
そして僕は父親の言葉を思い出した。
「死ぬまでに米屋の練り餡羊羹を一人で一本、まるまる全部食いたい」
食い意地が為せる夢である。そんな横で弟はこう言った。
「ぼくは丸大ボンレスハムをまるまる一本一人で食べたい」
ふんふん、で兄は?
「ぼくは文明堂のカステラを一人でまるまる一本食べたい」
子供のころの、家でのやりとりだ。
そんなことを思い出したら、さて、今は何が夢だろう、死ぬまでに一度はやってみたいことって?と考えた。
「巨大(25センチ)深皿で作る拙宅の特製プリンを一人で全部食い切りたい」→これは容易に叶う夢だ。
「神楽坂飯店の超巨大チャーハンを一人で食べてみたい」→これは独自性が薄いから魅力的ではない。
「伊勢原のパルテノンのアップルパイ(ホール)を一人でまるまる食べてみたい」→おそらくこれも容易過ぎる。
「メジル・シュール・オジェ村のシャンパンを全部飲み切りたい」→これをやったら途中で確実に急性膵炎で本当に死ぬ。
うーん、それではこれでどうだ。
「南千住の『尾花』で鰻を十人前食ってみたい」
「テキサスのオースティンの『カウンティライン』でスペアリブ三人前を独り占めしたい」
「二番町の『アジャンタ』で、チキンカレーを五人前たらふく食いたい」
「四ッ谷の『わかば』の鯛焼きを20匹一度に食べたい」
「ちゃんこ鍋四人前を中目黒の『鈴木ちゃん』で食い切りたい」
どうしようか、死ぬまでに一度はやって良いと言われたら、それは何を選べばいいんだ?食欲の秋、さらに悩む。