突貫小僧に対する思いもよらずの勝利

昨日は水曜日。いつものように6:47のバス目掛けてバス停「AI」に急ぐ。

停留所のポールに近づいてゆくが人影は無い。しめた、今日は勝ちじゃ、と思った瞬間、停留所の前の家の車の影から彼が現れた。鞄をたすき掛けした突貫小僧だ。

大リーグボールを花形みつるに打ち込まれた星飛雄馬のように、僕はがっくりと首をうなだれる。

バス停に着くころには、例の、どこ吹く風よと空を仰ぐ、しかしその裏には勝ち誇ったかれの横顔があった。

しかし昨日は何かが違った。

バスが時間になっても来ない。不思議と来ない。

と思った瞬間、時刻表の下に貼ってある掲示に目がいった。ああっ!今日は土曜ダイヤや!

僕は静かに、一歩足を横に踏み出し、近くの別ルートバス停「AS」に向けて歩みを始める。彼は気づいていない。逆転出きるかも知れん・・・。20mほど歩いたところでそう思った。

その瞬間だ。脱兎の如く、僕の横を駆け抜けてゆく風があった。突貫だった。

そしてもう一度見遣ったとき、すでに彼はその別ルートバス停の周りで寄り添うようにぐるぐるとマーキング行為を始めている。

しかし、僕はもう一度、待てよ?と思った。その別ルートバス停「AS」の時刻表も変わっているのだ。そこにもバスは来ないのだ。スマホの「バスいまどこ」を素早く操った僕は、にやついた。

もう一つのバス停「H」なら、あと3分で来るぞ!

ぼくはバス停「AS」に向けての歩みを止め、「H」に向けて小走りする。誰も追ってこない。

遠くからバスがやって来る。待望のバスが「H」にやって来る。止まる。僕は乗車した。一人乗車した。

突貫小僧はどこにいる?近くに来ていないのか?この俺の冴えた挙動を知らんのか?頭脳明晰にして俊敏なる切り替えをした僕のことに、気付いていないのか?

突貫を出し抜いた僕だったが、彼悔し残念がる彼の姿が見られなかったそのバスの車内は、腑抜けた饅頭のように味気なかった。

彼は僕に勝ったと、まだ思っている。そういうことを思うと、なおさらに、その通勤バスに乗っているのがつまらなくなった。

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Commented by およう at 2013-08-15 19:30 x
何とも言えぬその寂しきこころ、そうですねー、今日は終戦記念日・・・。
Commented by k_hankichi at 2013-08-15 20:04
はい、今日そんな日には、その余波ともいえる映画を観に行ってきました。
by k_hankichi | 2013-08-15 09:00 | 街角・風物 | Trackback | Comments(2)

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