みずぶろ

「きょうも、みずぶろよ」と母親に言われると、少し身震いして、ちょっとどきどきした。こどもの頃の夏。

みずぶろの嬉しいのは、入りながらにしてプールの感覚に溢れること。小さな浴槽でも弟と潜り比べをしたり、「自然に潜水したり浮上したりします」という触れ込みのプラモデルの潜水艦で遊び続ける。サンダーバード一号のオモチャを水底に沈めて、ロケット発射を繰り返す。

ろくすっぽ身体も洗わないままに、気付かぬうちに唇は紫色で、見付かって出されるころには、全身をバスタオルに包まらないと寒くて仕方がないほどに冷えている。

そのあとの、芯から冷んやりとした、しかし身体の外側はモワァッと温かい、午睡がたまらない。自分が氷になったかのような、融解への魔力。

ことしの夏は、みずぶろだ。
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Commented by maru33340 at 2013-07-12 12:35
みずぶろに
戯れし日の
遥かかな
(丸翁)
Commented by およう at 2013-07-12 16:47 x
すごくよくわかります^^
はんきちさんはほんとうに情景表現がお上手ですね。前にたすき鞄ぼうやとのバス停での出会いなど、その男の子の澄ました顔が浮かび、見ていないのに時々思い出しては楽しくなります。
今日もそうなりますね(^・^)
Commented by k_hankichi at 2013-07-13 07:11
maruさん、夏の俳句、いいね。
Commented by k_hankichi at 2013-07-13 07:20
おようさん、そういう、自然に浮かび上がってきた情景は、たとえばショートフィルムみたいな感じなんです。
by k_hankichi | 2013-07-12 07:13 | 街角・風物 | Trackback | Comments(4)

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