セルゲイ・カスプロフのスカルラッティ・・・アファナシエフ絶賛のピアニスト

件の『ピアニストのノート』のなかで、アファナシエフが、再三絶賛しているピアニストがいる。ロシアのセルゲイ・カスプロフだ。

“その人物は腹の底からモスクワ音楽院仕込みのロシア人だった。演奏を開始する前のピアノを前にしての彼の挙措に、まず私は打たれた。あたかもステージを泳いで横切る準備をしているかのごとくに、体全体がピアノに向かって前のめりに傾けられたのだ。彼のスカルラッティのソナタに私は衝撃を受けた。モスクワの空気が、ソヴィエト連邦時代の生活にあった強烈さがそこにはあった。ロシア学派だ。ついに私は、それが意味するものをはっきりと理解した。”(第一部、p76)

“彼ほど才能のあるピアニストはそうそう街を歩いてはいないものだ。私はこれほどの才能をもったピアニストを他には知らない―――確かに、現在存命中のすべてのピアニストの演奏を聴いたわけではないけれど。・・・(中略)・・・カスプロフはステージで微笑んだりはしない。想像するに、彼は音楽の政治局の誰かの気を引こうとしてはいないのだ。”(第三部、p287)

アファナシエフは、第2回スヴャトスラフ・リヒテル国際ピアノコンクール(http://www.richtercompetition.com/2008/en_news.php)の審査員をしていて、そこに登場したのが彼だった。惜しくも、二次予選で次のステップには進めていない。その理由は、レパートリーの狭さであることを指摘はしているが、それにもかかわらず、アファナシエフをして、このピアニストをここまで評するとはすごいものだ。

一位なしの二位となったブルガリアのエフゲニ・ボジャノフ(2010年のエリザベートは2位、同年のショパンコンクールは4位)のことは、“演奏はごてごてした飾りだらけで、音楽は跡形もなく消えてしまう。”と酷評しているから、カスプロフの凄さがわかる。

ロシアのYoutube版、rutubeに、これがアップされていて、このときの演奏を観ることができる。スカルラッティが、こんなに曲想豊かな響きをするものだということに驚くだろう。

ココ→http://rutube.ru/video/embed/779810

■演奏
ピアノ:Sergey Kasprov
1. D. Scarlatti、Sonata in F sharp major, K. 319
2. 同、Sonata in A major, K. 101
3. 同、Sonata in B minor, K. 87
4. 同、Sonata in E major, K. 380
5. 同、Sonata in F major, K. 17
6. F. Liszt、Apres une Lecture de Dante - Fantasia quasi Sonata, S. 158c
7. C. Saint-Saens - F. Liszt - V. Horowitz、Danse Macabre, S. 555
■収録
June 19, 2008(At Richter Piano Competition 2008, モスクワ音楽院)

■こちらは翌年のフランス、プロヴァンス地方のラ・ロック=ダンテロン音楽祭2009でのスカルラッティのソナタK.319, K.17, K.268

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by k_hankichi | 2013-02-18 00:09 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(5)
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Commented by Je at 2013-02-18 12:03 x
大変興味深く拝見しました。
ありあとうございます!!!
Commented by maru33340 at 2013-02-18 16:53
これはなかなかの奇才と見た。
ウォーミングアップも面白かった(笑)
ボジャノフはたまたま来日公演を聴き、凄いテクニックだとは思ったけど、また聴きたいというほどではなかった。
ちょっと注目。
Commented by k_hankichi at 2013-02-19 07:25
maruさん、Jeさん、このビアニスト。聴衆のことなど気に掛けぬ独立独歩に音楽にむかう姿勢がじつに良いですね。
Commented by Je at 2013-02-19 20:24 x
あらあら、有り難うが、ありあとう、になっていました。慌てたようです。ごめんなさい。本当に弾く前がユニークな方なので・・・。でも、あの気持ちはわかります。スカルラッティの捉え方も面白いですね。ディヌ・リパッティと全くちがう・・・。
Commented by k_hankichi at 2013-02-19 20:59
Jeさん、全く独自の世界を、こうも創ることができるのだと、ただただ感心、ですよね。


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