『レ・ミゼラブル』・・・ラッセル・クロウの凄みとアマンダ・サイフリッドの声が支える
『レ・ミゼラブル』を二、三週間前に観た三人の家人たちは、家のなかで主題歌を歌い続けている。そしてヒュー・ジャックマンがね~と、うっとりした声色で言い続けている。これはしょうがない行ってくるか、と、まだ観ていない家人と出かけてきた。
小学生のころに『ああ無情』を読んでいたときの記憶がよみがえってきたが、しかし、どうも感覚が違う。もっともっと、どうしようもない徒労と、救われのない気持ちと報われなさがそれだったから、僕にとってのジャン・バルジャンは、こんな話だったっけという違和感となって浮き上がってくる。どうしようもない歯がゆさと苛立ちがもっと表現されてほしい。
さて、ミュージカルということもあり、ジャン・バルジャン役のヒュー・ジャックマンの歌はうまかった。そしてさらにさらに素晴らしいのは、コゼット役のアマンダ・サイフリッドの歌声だ。美貌と歌声とふたつ兼ね備えることを恥ずかしながら初めて知った。ファンティーヌ役を演じたアン・ハサウェイの、つぶやくような何とも貧弱な歌声とは段違いである。これではミュージカル映画俳優とはいえない。
全体を通じて演技として良かったのは、ラッセル・クロウ。この人のふてぶてしさは、もう私生活もこうではないのかと思うほど(そうらしいけれども)凄みがあり、多少、歌の声色ががさついていても、それを補って余りある。
革命の歌(『民衆の歌』)で締めくくられる最後のシーンは、迫力のある映像美だった(音量も最大級にさせているところは、いかにもハリウッド的で、これには参った)。
『レ・ミゼラブル』オフィシャルHP ココ→
http://www.lesmiserablesfilm.com/index_splash.html
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