オーケストラ・フィルハーモニカ・アルペ・アドリアによるペルゴレージのスターバト・マーテル
昨日は神保町で友人と久々に忘年会。沖縄もち豚料理とクースーに舌鼓を打った。カボチャを煮たものに豚バラ肉を巻いた串焼きや、もち豚餃子、豆腐ようは特に旨く、酒が進む。うみぶどうはやはり食感が良く、箸休めにちょうど良い。店に揃えてあるクースーを端から一杯ずつ飲みつくしたころに、いつもの二次会の店に向かう。
カルチェラタン系のバーのようなビストロのようなその店は、照明がほの暗く、欧州の雰囲気そのものだ。そして更に、マスターがクラシック音楽好き故に、特に音響が良い。なんでも、スピーカーコードを銀線(メーター8000円らしい)にして、格段に良くなったとのこと。
お願いして、昼間に御茶ノ水で仕入れた音盤をかけてもらった。オーケストラ・フィルハーモニカ・アルペ・アドリアによるペルゴレージのスターバト・マーテル。指揮はルイジ・ピストーレ、ソプラノ:マリアンナ・プリツォン、メゾ・ソプラノ:エレーナ・ボスカロル。2010年12月のライヴ録音。
とても禁欲的な、抑制がきいた、気負いのない演奏だ。イタリアの小さな田舎町にある教会のミサに、ふと迷い込んでしまったような感覚に陥る。
オーケストラは時折、はたとするほど鄙びた音を出して、その旋律に合わせて僕は静かに呼吸をしてゆく。静かな吐息をみながついていることが分かる。
この演奏はイタリアのスロヴェニア国境に近いフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州(州都トリエステ)の、アドリア海の付け根の町ゴリツィアの合唱団と管弦楽団だそうだ。おなじアドリア海を臨むマルケ州の海沿いの町イエージに、ペルゴレージは1710年1月4日に生まれた。そしてこの曲を書いてまもなく 1736年3月17日に息を引き取った。享年26歳。アドリアの海というのは、僕は見たことがないのだけれど、おそらく、この音楽のなかにある鄙びた空気と柔らかい太陽がそこにあるのに違いないと思う。
思い出してみれば、初めてこの店を訪れたときも、ペルゴレージのスターバト・マーテルが掛かっていた(モントリオール・シンフォニエッタによる素晴らしい演奏)。
いつもこの店に来ると心が綺麗になる。
こんな美しいものを皆が大切にしていれば、きっと良い年がくるだろう、と思った。
音盤:イタリアVELUT LUNA、CVLD 219
マリアンナ・プリッツォン(ソプラノ)
エレーナ・ボスカロル(メゾソプラノ)
ボデチャ・ネジャ女声合唱団
アルペ・アドリア・フィルハーモニー管弦楽団
ルイジ・ピストーレ(指揮)
録音:2010年12月12日、ゴリツィア(イタリア)、フリウラーナ文化ホール、ライヴ
http://tower.jp/item/3045394/Pergolesi%EF%BC%9A-Stabat-Mater