『アースダイバー』(中沢新一)に、ちょっとがっかりする
東京の地勢をもとにその街と都市のなりわいの歴史をひも解く中沢新一の『アースダイバー』(講談社)を読んだ。
古代からの地層図と縄文地図、そして中世や江戸の古地図、それを現在の地図を重ね対比しながら、あるていどのフィールドワークを駆使して、仮説を軽く検証していくような流れだ。
日常と猥雑、晴れと褻の場がどこにあったのか。それをひも解く。猥雑は死界と接するような境界地にそれは常に出来上がっていた。つまり谷町。そこには窪地があり、川の河口があり、海があり、流れてゆく先があった。
坂があるところに、坂下があり、崖がある。人びとが、なにか畏れを感じた場所。それはしかしやがて、花街になり、人びとの好奇心が集まる、そして、欲望がとぐろを巻き、飲み食いと、そして人の体から互いに放たれる液体とともに解消されていく場所となっていく。ちょっと軽めに仕立てられた謎解き的な構成にもなっていて、読み易い。
一方で、先人たちのこの手のあまたの調査研究の成果をいつのまにか流用しているようなところがあり、しかしそれらには引用箇所の表示がない。こういうところは疑問に思ったし、ちょっとがっかりした(人類学の専門家であれば、という意味)。
中沢さんの、これらの興味深い仮説のかずかずは、専門的な研究としての調査検証、そしてあらたな論理構築ワークに、きっと引き継がれていると思う。そういった意味での「問いかけ」としての価値はあると思った。