石田千と『ベルリン・天使の詩』…光景が記憶に、記憶が映像に
石田千のエッセイを読んだ。『屋上がえり』(ちくま文庫)。中野の丸井。上野の聚楽。日本橋の丸善。ぼくも屋上好きだったことを、久しぶりに思い出した。
ファミリーレストラン聚楽台のたたずまいを表すシーンで、著者はそこが、“カウリスマキの映画のように停滞している”、とする。
ん?映画も好きなのか、石田さん。そんなシーンからマニアックな情景までを思いだしているのか?ああ、うん、この手の映画が好きな人はいるなあ。
そのところで、ぼくもいきなり、『ベルリン・天使の詩』というヴェンダースの映画を観たときの状況を想いだした。新宿かどこかだった。ストーリーはろくすっぽ覚えていないが、あることだけは鮮やかな記憶がある。
光景というものが織り成す記憶には、なにか甘くほろ苦いものが付いている。