音楽、小説、そして酒を愛する方々との空間です

by はんきち

真夏の夜のぬるく遠い記憶

会社から帰る道すがらの、夜の空気はぬるく、遠いむかしの記憶がよみがえる。

蚊帳が吊られた部屋の畳部屋で、屋外の虫の音に聞き耳をたてながら、なかなか寝付けぬ夜の記憶が。

蚊取り線香の煙は、鼻腔の奥底にまで、まとわりつき、額の汗と混じって湿度を増す。

あのころ、夜はひたすらに静かで、騒いではならず、やかんに入った麦茶を飲みに台所に行くのも億劫なくらいだった。

いや、億劫というのではなく、おっかなかった。鬼の面が暗闇に浮かび上がってくると信じて疑わなかった頃だ。

静かにじっとして、まんじりともせずにいるうちに、いつしか記憶は遠くなり、気付いたときは、ひんやりとした空気が流れ来る朝になっていた。あのころの朝は、ことさらに爽やかなる朝だった。
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by k_hankichi | 2012-07-26 22:44 | 街角・風物 | Trackback | Comments(0)
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