本当の夏の訪れを、感じた。

まだほのかに空に明るさの余韻が残る夕がた、会社のビルから外に出た。その瞬間、潮の香りが頬を撫でた感じがした。具体的にいえば、その生ぬるい空気のどこかに、潮の香りのごく少量の断片が混じっていた。

「夏だ!」と思った。なぜそれが夏なのか、という説明はできないのだけれど、確実に、それは夏の香りだった。

幼い時から、夏には海水浴に行くものだとされていて、そのときをいつも今か今かと待ち望みながら、カルキ臭いプールに通いつづけた普通の夏。本当は、そのプールの匂いとぎらぎらした太陽の照り返しが頭の中につくる「ぼわーん」とした眩暈のような世界が「夏の香り」なのかもしれない。

しかし、この夕の空気のどよんとした密度のなかに存在した潮のごくわずかの余韻は、地球に生きる生物のひとりの僕として、「夏」の到来があったことを、たとえそれがおかしな動物的感覚だと指摘されようとも、確実に区別できた。

天文学的にはどうなのかは、わからないけれども、正真正銘の夏に入ったということを、今夕、体感的に、非常に動物的に、感じたのだった。
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Commented by maru33340 at 2012-07-10 22:45
季節というのはな、その人が来たと感じたときにくるものなのじゃ。
Commented by k_hankichi at 2012-07-10 22:55
この夏の感覚を、次の歌を歌う時まで、取っておきたい。

『少年時代』
夏が過ぎ 風あざみ だれの憧れにさまよう
青空に残された 私の心は夏もよう
夢が覚め 夜の中 長い冬が 窓を閉じて 呼びかけたままで
夢はつまり 想い出の後先(アトサキ)
夏祭り 宵かがり 胸の高鳴りに合わせて
八月は 夢花火 私の心は夏もよう
by k_hankichi | 2012-07-10 22:21 | 街角・風物 | Trackback | Comments(2)

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