ミステリーは苦手なのだが、サスペンスとは異なる軽いタッチであれば、受け入れられる。『傍聞き』(長岡弘樹、双葉文庫)は、そういう小説だった。短編集。
標題の作品は一番感心するもの。隣家で盗難事件が起きる。その犯人探しの過程で、ふたつの「傍聞き」(二人の会話を第三者に聞かせること)が重なる。その設定が絶妙だ。
『迷走』は、急患を運ぶ救急車が、病院に入らずにを迷走する。看護士は、誠実なのか、不誠実なのか。怨恨絡みの仕返しか。理由はいかにも探偵小説並みだ。
たまに読むミステリーは、淡い清涼剤ほどのものが、いまの僕にはちょうどよい。