暖かくなってくると、くず餅が食べたくなる。実家に行く途中に、亀戸の船橋屋で、いつものくず餅を土産に買った。すると相方との間で、これまたいつもの会話が始まってしまった。
「くず餅のどこがどうして旨いの、ねろねろとさせて気味悪い」
「なにを言うのだ、くず餅は、あれが醍醐味なので、黒蜜にきな粉をまぶしてねろねろしてからでないと、何の意味も無いのさ」
「ぐにゃぐにゃして、なに、下品なひとの食い物?」
「下品ではない、これは下町の上品だ」
「黒蜜を皿から舐めるでしょ」
「残りの蜜を舐めるのが通である」
「餅も芋なのだか澱粉なのかわからないし」
「葛だ、葛の粉だ」
「屑?」
「いや違う」
「ういろうと同じでしょ、ういろうは嫌いだというくせに、どうして」
「あれとこれとは雲泥の差だ」
こんな会話をしたことを思い出しながら、家に帰って
船橋屋のHPを読んでいたら、「葛粉」というのは、小麦でんぷんを地下天然水で15ヶ月発酵精製したものだと記してあった。
しまった、くず餅は、小麦粉だったのか…。さすればそれは、俺が天敵としていたういろうの兄弟?
僕は焦り、今度はWikiで「ういろう」を調べて安心した。
「米粉などの穀粉に砂糖を練り合わせ、蒸して作る。穀粉には米粉(うるち米、もち米)、小麦粉、ワラビ粉などが用いられ、砂糖には白砂糖、黒砂糖などが用いられる。」
そうだろうそうだろう、ういろうは米粉から、なのだ。だから、小麦粉からつくるくず餅は、断然異なるのだ。
いつしか、論理のすり替えが行われ、ユイスマンスの世界に陥っていく、われ。