麗しのサマーシュークリームの挫折・・・春の爽やかなそよ風が恨めしい夕方
近所のお菓子工房で、サマーシュークリームという新商品が売り出されていて、「シュークリーム」と名がつくものに目が無い僕は、家人の分も含めて買い求めた。お店の人からは、「すこし置いておいて、しかし冷たいままでお食べください、保存は半月はだいじょうぶですよ」、と意味深な言葉とともに渡された。
ん…?買ってすぐ食べるに決まっているじゃないか、なにが半月だ、そんなに置いておくわけないではないか。家に帰るなり、そそくさと袋を開けて頬張ろうとした。
がしかし、である。歯が立たない。かちんこちんに凍っていて、歯が立たない。一口も食べられない。な、なんなんだこれは…。冷凍されているシュークリームだから、それはそうういうものなのか。店員の言葉が重要な意味をもっていたことに、ようやく気付いたが後の祭りだ。
また袋に入れなおし、冷凍庫ではなく冷蔵庫の棚のほうに置くことにする。小一時間ほどして、解凍されつつあるところを確かめてから、ようやく口にしてみた。しかし食べる気満々であった頃合いと比べて、なんとも食べ方にも元気の出ない。味も心なしか、モサモサしている。萎れた味…。あ、挫折の味?
イソップ寓話での「よくばり犬」の心境と、超人気の名店に入ったけれども散々待たされてから出てきた料理が普通だったときのような、そんな感じだ。
人は、夢の膨らみとしぼみが短時間で訪れるとき、どうしようもなく心細く、居心地のわるい境地になる。
春の爽やかなそよ風が恨めしい夕方である。